2010/01/20
形整える加減難しい
「桃の節句」と言えばひな人形。女の子の健やかな成長への願いを託される人形たちはどのように生まれてくるのか。蒲郡市に本社を置く人形製造「三喜」の営業本部(幸田町坂崎)におじゃまし、社長の清水文平さん(43)から手ほどきを受けた。
人形の製造工程は、わらや木でつくられた胴体に、きらびやかな布を裁断して作った着物を着せてから、腕や着物など全体の形を整えるのが大まかな流れ。最後に顔の部分を取り付けて完成となる。
お手伝いさせてもらったのは、左右に突っ張った形になっている人形の腕を折り曲げる作業。「口で説明するのは難しいんですよね」とお手本を示してくれた清水さんは、五人ばやしの一セットをあっという間に仕上げてしまった。
折り曲げるのはまず肩の部分から。ナイフのような形をした道具を曲げたい部分に押し当て、そこからぐいっと曲げるのだが、中に通っている針金が意外に固く、かといって力を入れすぎると着せてある着物にしわが寄る。加減が難しい。角度を間違え、腕があらぬ方向に曲がってしまい冷や汗が出る。
なんとか左右の肩を曲げ、今度はひじの部分。五人ばやしは、笛や太鼓など持つ楽器によって、腕の形も変わってくる。今度は角度を間違えないように、慎重かつ大胆に折り曲げ、鼓を打つしぐさができあがった。一体を仕上げるのに十分弱もかかり、これではとても戦力になれない。
作業場に隣接する展示場には豪華な段飾りがずらり。今年も三月のひな祭りを控え、子や孫の誕生を祝う人たちがすでに訪れている。
「心を込めて手作りしたものを喜んで買ってもらえると、こちらも幸せな気分になれる」。清水さんの顔に優しい笑みが広がった。(中山聡幸)
【メモ】特に資格は必要ないが「細かい仕事やものをつくることが好きな人が向いているのでは」と清水さん。和裁の経験もあれば役に立つという。三喜の場合、人形をつくるパート従業員の時給は800円前後。
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