2009/12/09
わが子のように世話
千年以上前から長野県の開田高原で飼いならされてきた木曽馬。幡豆町鳥羽に今年四月にオープンした「吉良の赤馬牧場」にオーナーの河井弘康さん(62)を訪ね、温厚で従順といわれる馬の世話をさせてもらった。
牧場の朝は、えさやりから始まる。赤馬牧場で飼育しているのは岳桜(雄九歳)、菊姫(雌六歳)、春嶽(雄五歳)の三頭。干し草を差し出すと、力強く食い付いてきた。
三頭の食事中、一周百二十メートルの馬場を歩いて「ぼろ拾い」をする。「ぼろ」は馬ふんのこと。「放し飼いなので、あちこちにするんですよ。丸く、コロコロしているのが、良いうんこ」と河井さんが教えてくれた。
スコップですくい取りながら、ぼろを観察。においはほとんどない。その形状で三頭の健康状態を推し量り、それぞれのえさの量を加減するという。「大ぐその春ちゃん、小出しの岳ちゃん。菊ちゃんはいつも軟らかめ」。河井さんは一目で見分けが付くらしい。
一輪車に山盛りのぼろを片付けた後はブラッシング。岳桜を担当、馬体をブラシでゴシゴシこする。「もっと強く」と河井さん。力を込めてブラシをかけると、冬毛から砂ぼこりが立つ。気持ちよさそうに目を細める岳ちゃん。この作業で毛並みが良くなり、皮膚も丈夫になるという。
続いて「裏掘り」に挑戦。馬のつめに詰まった土を、先端に金属の付いた道具でかき出す作業だ。河井さんが手本を見せてくれた。「岳ちゃん、足きれいにするよ」と声を掛けながら、一本ずつ足を上げさせる。
河井さんがポンポンと足をたたくだけで、素直に足を上げる岳ちゃんだが、見よう見まねでやってみると、なかなか応じてくれない。いつもと勝手が違い、へそを曲げたのか。体重は四〇〇キロ。無理やり上げさせようとしても、びくともしない。ようやく上げた足を抱え込み、何とか土をかき出したときは汗だくになっていた。
休む間もなく、乗馬体験の準備。馬の背に重さ十七キロのくらを載せたり、口にはみを付けたり。世話を焼いてきた岳ちゃんに乗って馬場を出た。
馬の揺れに身を任せ、林道を往復する約五十分の森林浴コース。その心地よさに、河井さんが二十年にわたって開田高原に通い、牧場を開く夢を膨らませてきた理由が分かった。(広中康晴)
【メモ】牧場経営に資格は必要ないが、最低限の乗馬技術と飼育方法の習得がいる。赤馬牧場は家族経営で、現在のところ雇用予定はないが、アルバイトは日給5000円程度。「心から馬が好きなこと」が条件。
転職・求人情報検索(名古屋市・愛知県・岐阜県・三重県)はトップから