2009/12/03
分かりやすい言葉ほど、経験や思いに左右されてしまって、伝えたいイメージと、社員の皆さんが理解したイメージがずれていることがある。
例えば、われわれミツカンの中では「食酢は(競争力が)強い」と言っていますが、一体何が強いのか。社員に聞くといろいろな意見が返ってくるんですね。ブランド力とか、技術があるとか。「強いものをより強く」という方針一つとっても、どう強くしたいんだという観点で(社員の)ベクトル合わせをしないといけませんが、意外にできていない。
酢は必ず家庭にあるものだという思い込みがあるけれど、若い主婦の家庭には、飲用の黒酢はあっても調理用のお酢がないことがあります。そういう事実に向き合い、そういう人たちにどう使っていただけるか。その時に今までの商品でいいのか。違うアプローチをしなきゃなんないんじゃないかとか…。具体的に整理してきちっとやっていくことだと思っています。
スーパーを担当している営業の人間からすれば、定番の売り場だけでなく、加工食品や生鮮品の売り場など、ほかに幾つも売り場をつくっておけば完了、というような思い違いがある。
確かに店内ではそうかもしれませんが、通販やネットスーパーで買われる方もいますし、外食や総菜からメニューを知ったり、信頼する(料理研究家などの)オピニオンリーダーから示唆を受けて料理を作ったりすることもあります。
例えば、当社は春から「蒸ししゃぶ」というメニューを提案しています。ホットプレートを使うので、家電量販店の店頭で「蒸ししゃぶ」を提案しながら「味ぽん」を売るのも消費者への一つのコンタクトでしょうし。視野を広げ、どこにチャンスがあるかを考えながらやりなさいと言っています。
国内では人口も減っていて、いろんな規範やパラダイムが変わりつつある時代の過渡期。それが正しいとか、短期的に○か×かではなく、長く存在が許されること自体に価値があるし、(創業から200年を超える)当社は余計にそうだと思うんですね。今起こっていることをありのままに受け止め、われわれがどんな役割を担うかを考えて、果たすことが大事だと思います。
【いとう・こういち】 関西学院大法学部卒。86年、中埜酢店(現ミツカン)入社。ミツカングループ本社執行役員兼経営企画部長などを経て09年3月、食酢やぽん酢などの加工食品を製造販売する事業会社「ミツカン」の社長に就任。45歳。京都市出身。
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