2009/10/28
入所費 毎月天引き 相次ぐトラブル「就活できない」
生活保護の受給者などを対象にした「無料低額宿泊所」や無届けの類似施設の一部で、金銭管理や住居環境をめぐり、入所者とのトラブルが全国的に相次いでいる。愛知県内でも、元入所者の男性が生活保護から不当に高い費用を取られたなどとして施設を相手にした訴訟を準備。ホームレスを支援する市民グループは「困窮者を狙った貧困ビジネス」として、国や自治体に悪質業者への早急な対応を求めている。
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「ちょっと飲む?」。昨冬、寒風吹きすさぶ名古屋駅近くの公園、派遣切りにあった男性(43)は、缶コーヒーを手にした60歳くらいの見知らぬ男から声をかけられた。「泊まるところがあって飯も出て、働かんと3万円の金がもらえるぞ」
所持金がなく、住む所にも困っていた。軽い気持ちでついていった先は、名古屋市内にある無届の宿泊施設だった。
入居に際し、生活保護の申請と、それに必要な求職活動の証明書を求められた。区役所やハローワークの手続きには、施設の職員が付き添った。毎月の生活保護費が振り込まれる銀行の通帳と印鑑は施設が預かる決まりになっていた。
男性は1ヶ月11万円7千円を受給。そこから入所費として8万6千円が天引きされ、手元に残るのは3万円ほどだった。1日3食付いて、入浴もあったが部屋は四畳半を薄いベニヤ板で仕切った粗末な個室、小さな物音で隣から「うるさい、殺すぞ」と脅かされたこともある。
男性はい「息苦しくなった」と9月に退去。今はしないの避難所に寝泊りしながら職を探している。
「自立を支援するはずなのに、とても就活できない」とこぼすのは今月、市内の別の施設を1ヶ月ほどで退去した男性(46)。
生活保護費から1ヶ月の入所費9万5千円を天引きされ、残りは2万円。「高いとは思ったが、選択肢が無かった」。面接の洋服代や交通費に回す金がなくなり「生活保護から抜け出せない」
入所費には食費と別に、管理費1万2千5百円、光熱費1万円以上が含まれるのに、エアコンは百円入れないと動かないコイン式。「やはりピンハネされている」と感じた。
こうした声に、愛知県内で宿泊所を運営する業者の1人は「不当な利益を得ているわけではない。むしろボランティアに近い」と反論。県内に複数の施設を運営する業者は「取材は断っている」とだけ答えた。
【無料低額宿泊所】
生活困難者が無料または低料金で利用できる宿泊施設。社会福祉法の第2種社会福祉事業の位置付けられ、不動産業者や民間非営利団体(NPO)などが自治体に届けるだけで設置できる、厚生労働省の調査によると、6月末時点で全国に439施設、入所者数は1万4089人。ホームレスを対象に無届のまま運営している施設は1月時点の初の調査で127施設、入所者数1715人となっているが、詳細は不明。
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