2009/10/27
県内 OB再任用など取り組み
県内の消防職員千四百四十四人(四月一日現在)のうち、約三割にあたる四百五十九人が今後十年で定年退職する。火災現場が減る中、ベテランの消防技術を若手にどう引き継ぐかが課題だ。OBを指導役として再任用するなど、大量退職を見据えた取り組みが始まっている。 (山本真士)
「放水が遅い。きちんと伝令が出ていない」。金沢市消防訓練場で行われた住宅火災の消火訓練。駅西消防署の堀田茂さん(60)は後輩たちに鋭い視線を向ける。
四月に市消防局に再任用された堀田さんは二十一歳で消防士になってから現場一筋。今も火災現場へ出動する一方、若手の指導を担当する。「体力と気力が続く限り、経験や技術を伝えたい」との思いで、定年後も消防に携わることを決めた。
中堅消防士の高山隆司さん(34)は「堀田さんは自分が経験したことない現場を踏んでいる。貴重な意見が聞ける」。若手消防士の山田遊太さん(20)は「消防活動だけでなくマナーや礼儀も厳しく指導されます」と話す。
市消防局は昨年、定年退職した職員の再任用を始めた。任期は一年で、昨年は三人を採用。今年は堀田さん一人を採用した。背景には、大量退職による現場の技術力の低下への危機感がある。
一九七一(昭和四十六)年に市町村の消防本部設置が政令で決まり、各消防機関は若者を大量採用した。県内の消防職員は、七一年の五百六十一人から、七五年には九百七十二人に急増。団塊世代の退職が既に始まっており、その後に当時採用した職員の大量退職が続く。
この世代が経験を積み始めた七〇年は、建物火災は三百九件だった。一方、二〇〇四~〇八年の五年間は二百十~二百三十件台と大幅に減少。皮肉にも若手が現場で経験を積みにくくなっている。
堀田さんは「最近は装備が充実してきたため、現場で身の危険を認識しづらい。危険予知といったマニュアル化できない経験も伝えたい」と力を込めた。
二十七、二十八の両日は同訓練場で、市消防局の新人を含む約百十人が、日ごろの訓練の成果を披露する。
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