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やってみました 記者たちの職業体験ルポ 測量士

2009/08/06

休まずミリ単位作業

 映画「剣岳 点の記」にも登場した測量士とはどんな職業なのか。興味を持ち、現代の測量の現場を体験してみた。
 お願いしたのは、刈谷市の梶川土木コンサルタント。同社技術部マネージャーの河合孝行さん(43)ら四人の測量士が、市内の河川敷の土地の位置を確定するという測量作業に同行した。

 作業服は持っていないので、ジーンズに長靴、半袖シャツといういでたちで参加したが、気温三〇度を超える中で河合さんらは長袖シャツだ。その理由は後で分かることに。

 まずは、測量をする河川敷の土地に車で移動した。河合さんらは、安全靴に履き替えるとすぐに、土手の草むらにどんどん入っていく。木製のくいを打ち込み、くいの上には金属製の測量びょうを打つ。これがこの土地を確定するポイントになるという。

 これを何カ所か続けるのだが、河合さんらは胸までありそうな草むらを平気な顔でかき分けていく。河合さんに聞くと「山に登る測量もしたが、もっと道なき道を行く場合もあり、大変でしたよ」という。

 続いて地元自治体が定め、測量の起点となる「基準点」まで移動。ある公園内にある基準点にトータルステーション(光波測距儀)という測量器械を設置した。百メートル以上離れた場所には測量器械から飛ばす光を反射するミラーを置き、距離と角度を測り始める。

 この作業を基準点から場所を確定するための土地まで一キロ以上、ほぼ歩いて何度も続けた。炎暑の中、重い器材を抱えて河合さんらは汗でびっしょり。トータルステーションやミラーを設置する三脚を立てる作業をやらせてもらったが、正確に設置するのは難しく、何分もかかる。河合さんは「十五秒程度でできないと次の作業に響きますよ」と手厳しい。

 午後まで作業は続き、この間、休憩はなし。ミリ単位での正確さを要求されるため、時間をおくと誤差が出やすいという理由からだ。やぶ蚊の攻撃にも遭い、半袖シャツの自分をのろった。だから河合さんは長袖だったのだ。黙々と作業を進める河合さんらに尋ねると一様に返ってきたのが「自分たちが測量をしたデータがないと建物や土木作業もできない」という自負だった。現代の測量士も、剣岳を測量した人々と同じ血が流れていると感じた半日だった。(吉田幸雄)

 【メモ】測量士になるには、国土地理院が実施する試験を受験するか、専門技術を学ぶ大学や専門学校などに通い、実務を一定期間経験して登録申請するやり方などがある。梶川土木コンサルタントでは、専門学校を出た場合の初任給は18万円ほど。梶川洋社長は「若い人が育つ職場にしていきたい」と話す。

トータルステーションという測量器械で距離などを測る測量士=刈谷市内で
トータルステーションという測量器械で距離などを測る測量士=刈谷市内で