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【滋賀】大忙し、高月の日系ブラジル人外壁職人 「仕事、友達に恵まれ幸せ」

2009/06/26

 昨秋のリーマンショックに端を発した大不況。雇用環境の急激な変化は、国内で生活する外国人にも重くのしかかっている。県の統計では、年明けから4カ月で県内の外国人の数は1400人近くも減少。仕事を失って日本を去る人が後を絶たない中、施主から引く手あまたのブラジル国籍の外壁職人がいると聞き、作業現場を訪ねた。

 西浅井町余の住宅新築現場。ニッカーボッカー姿の男性が重さ10キロはありそうな外壁材をひょいと持ち上げる。住宅の周囲に組まれた足場を軽快に登り、壁に据える。傍らの女性が笑みを浮かべながら電動工具でねじ止めしていた。

 ブゾン・ルイス・カルロスさん(39)とナカムラ・アリスマリア・カオルさん(37)夫妻=高月町井口。日系ブラジル人の2人は来日して16年以上になる。愛知県や群馬県での工場勤務を経て、12年前に知人の紹介で同町にやって来た。

 外壁仕事は力だけでなく、丁寧さも要求される。専門用語にも面食らった。それでも普通の人が1年はかかる仕事を数カ月で覚えた。「熱意と集中力が違った」と、夫婦を駆け出しだったころから知る外壁工事業光商店(同町井口)の森忠男社長は目を細める。

 カルロスさん自身も「1枚、1枚、パネルをはめていって完成した瞬間が気持ちいい」と仕事が大好きだ。現在は同社の専属職人として月に数件をこなす。これまでに携わった物件は400棟を超え、今では施主から指名されての仕事も多い。

 「技術はもちろん、いつも笑顔で現場を和ませてくれる彼らの人間性が信頼されているのでは…」と森社長。仕事が重なり、数日待ってでも夫婦を指名する施主もいるという。

 県国際課によると、昨年末に約2万6000人いた県内の外国人は、1月以降に急激に減少し、5月1日時点で5%減。「もともと住民登録していない人もいるとみられ、本当はもっと多くの外国人が流出しているだろう」と話す。

 実際、カルロスさん夫婦の親せきや友人も何人もが仕事を失いブラジルに帰国した。「さびしいね。でも仕事見つけるのはほんとに難しい。良い仕事と良い友達に恵まれて幸せだと思う」と今日も仕事に励む。

 (多園尚樹)

仲良く作業に励むカルロスさん(左)とアリスマリアさん夫妻=西浅井町で
仲良く作業に励むカルロスさん(左)とアリスマリアさん夫妻=西浅井町で