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【雇用崩壊】「派遣」闘い続く 愛知の43歳男性、労働審判で訴え

2009/06/21

 景気が底を打ったとも言われる中、雇用の現場は依然厳しいままだ。世界同時不況による“トヨタショック”に見舞われ、全国でも突出して非正規労働者の失業が多い愛知県では、契約期間途中での「派遣切り」や「雇い止め」、賃金不払いなどの問題に直面するケースが後を絶たない。解決の糸口を求めて公的機関に駆け込むケースも増えており、多くの派遣労働者には今も「底」が続く。

 「正社員になって現場の仕事をしないか、と派遣先から誘われたのに、解雇は裏切られた思いだ」

 人材派遣会社から解雇を通告された愛知県春日井市の元派遣社員皆木太郎さん(43)は切実に訴える。勤めていた名古屋市の派遣会社に、皆木さんが解雇を無効として未払い賃金と慰謝料など約278万円の支払いを求めた労働審判の第1回審理が18日、名古屋地裁であった。

 労働審判は2006年に始まった制度。雇用に関するトラブルなどを取り扱い、基本的に3回以内の審理で結論を出す。07年には同地裁で111件の審判が行われている。

 派遣会社側は「世界同時不況の中、やむを得ない解雇だった」と棄却を主張。裁判所は未払い分約80万円での調停を勧告したが、会社側は「今後、対応を検討する」として審理継続となった。

 申立書によると、皆木さんは07年3月、派遣会社に採用され、春日井市内のセラミック工場で守衛として勤務。08年11月からは、今年5月までの期間で別の派遣契約を結び、同工場の製造現場で働いていた。

 ところが働きだして1カ月後の12月初め、派遣会社側から09年1月9日付で同工場での勤務打ち切りを通告。さらに別の派遣先がないとの理由から、解雇された。皆木さんは「具体的な説明もなく、解雇は許せない」と訴えている。

 解雇の背景には、派遣先の工場の業績悪化がある。取材に対し、工場幹部は「11月下旬に自動車関連の受注が極端に落ち込んだ。仕事量は6割減になり、派遣社員には撤退してもらった」と説明。現在も受注減の状況は変わらないという。

 皆木さんについては「守衛から変わった直後に、予想もしない不況になった」と話し「正社員化は可能性の話だと思うが、派遣会社に対し仕事を打ち切る1カ月前に告知もしており、本人も納得してくれたと考えていた」としている。