2009/05/30
世界同時不況の克服に向けて編成された2009年度補正予算が29日成立し、総額約13兆9000億円と過去最大の景気対策が執行される。輸出、生産の持ち直しで景気の最悪期は脱したとの見方が大勢だが、雇用情勢の悪化と消費低迷に歯止めはかかっていない。対策の効果がどこまで持続し、景気回復の足掛かりをつかめるかは不透明だ。
■■ 期待
補正予算として初めて10兆円を突破した今回の予算は「極めて臨時異例的なもの」(与謝野馨財務相)で、政府は実質国内総生産(GDP)を2%程度押し上げ、40万-50万人の雇用創出効果を見込んでいる。
消費刺激策では、一定の環境基準を満たした新車購入に最大25万円を補助する制度と、省エネ家電の購入でお金に換算できるポイントを付与する「エコポイント」制度の導入が目玉だ。
輸出激減、消費低迷にあえいできた自動車と電機業界からの期待は大きい。「エコポイント」は、予算成立前の今月15日に「見切り発車」し、家電量販店は値引き商戦などで火花を散らしている。
雇用対策では、失業者の職業訓練期間中、月10万-12万円を支給する基金の新設などが柱。生活保障をしつつ、再就職準備をしてもらうのが狙いだ。
■■ 疑問
政府は今月、輸出、生産の持ち直しから景気の基調判断を3年3カ月ぶりに上方修正した。しかし、それが雇用や個人消費の改善に波及していないのが課題で、その傾向は、29日発表の各種統計で鮮明になった。
3月に半年ぶりに上昇した鉱工業生産指数は、4月も上昇し、5月、6月もプラスの見込みだ。逆に、4月の完全失業率は5・0%まで上昇し、有効求人倍率は過去最低の0・46倍に低下。4月の1世帯当たりの消費支出は実質で前年同月比1・3%減で、デフレ懸念が強まっている。
企業の人員過剰感は強く、失業率がさらに上昇すれば、今回の雇用対策だけで吸収するのは困難だ。エコカー、省エネ家電の購入支援も「需要の先食い」との指摘は多い。
逆に、確実なことは財政の悪化だ。今回の補正で、国債を10兆8190億円発行し、09年度の国債発行額は44兆1130億円と初めて40兆円を突破。税収が当初見込みより減少し、初めて国債発行額が税収を上回るのは確実だ。
(東条仁史)
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