2009/04/19
陸上自衛隊春日井駐屯地(春日井市西山町)が実施する「隊内生活体験」が企業の新人研修として人気を集めている。「実社会とは違う雰囲気で鍛えてもらえる」「社員の団結も強くなる」と評判で、今春は昨年より2社多い9社が申し込んだ。駐屯地側も自衛隊の内情を知ってもらう絶好のチャンスと積極的に受け入れている。
「縦隊、進め」「回れー、右!」。真新しい作業着に身を包んだ男女が行進練習に励んでいた。ぎこちない動きには「もう一度やり直し」と教官の声が飛ぶ。若者は緊張した面持ちで腕を振った。
8日から2泊3日の日程で“入隊”したのは自動車部品メーカー「愛三工業」(大府市)の高卒の新入社員。同社は40年近く隊内生活体験を研修に取り入れており、今年は男女32人が参加した。
研修では、隊列行進や敬礼を学ぶ基本教練のほか、救急法の実技、地図を片手に約6キロを行進する野外行進、3000メートル走などの体力測定などを体験する。午前6時の起床から、午後11時の消灯まで分刻みのスケジュールだ。
同社の人事担当者は「規則正しい生活の中で、社会人としての自覚や忍耐力が身につく。若者に集団行動の大切さを教えるいい機会」と入隊の意義を語る。
また、企業にとっては1人当たり3000円前後という低料金も魅力の1つだ。費用は食費と若干の光熱費、クリーニング代のみで、施設使用費や講習料は不要。同駐屯地広報班長の梅本幸二三尉(44)は「不況で経費削減が進む中、新人研修を頼みたいという申し出は増えている」と話す。
一方、駐屯地側は防衛に関する講話や広報ビデオの上映などを研修メニューに組み入れ、自衛隊のPRに力を入れる。同駐屯地が出動したイラク・サマワでの復興支援や災害派遣を紹介したり、夜には若手自衛官との懇談の場を設けたりと工夫を凝らす。参加した加藤一さん(18)は「軍服を着た怖い集団というイメージがあったけど、意外と気さくで話しやすかった」と研修を振り返る。
陸上自衛隊幕僚本部によると、同様の生活体験は全国100以上の駐屯地で行っており、年間2万人近くが入隊しているという。梅本三尉は「任務との兼ね合いもあるが、今後も可能な限り受け入れていきたい」と話している。
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