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【愛知】医療・介護従事者ら悲鳴 パワー カスタマー セクシュアル ハラスメント深刻

2025/04/23

県医労連 「休・離職の一因」 県に対策要望

 県医療介護福祉労働組合連合会(県医労連、名古屋市)は、県内の病院や介護施設などで働く看護師や介護職の約3割がハラスメントを受けたことがあるとの初の調査結果を公表した。患者や利用者からの被害も含まれ、担当者は「労組への相談も毎日のようにあり、ハラスメントが休職や離職につながっている実感がある」とし、県へ防止対策の強化を求めた。(出口有紀)

 ◇ ◇ ◇

 調査は昨年12月~今年1月に実施。県医労連には病院や介護施設など50カ所が加盟しており、調査には看護師や介護職ら1255人が回答した。ハラスメントを受けたことがあるかとの質問に「受けたことがある」と答えたのは33%、「目撃したことがある」は12%だった。

 複数回答でハラスメントの種類を聞いたところ、パワーハラスメント(パワハラ)が56%と最多で、患者や利用者から受けるカスタマーハラスメント(カスハラ)26%、セクシュアルハラスメント(セクハラ)12%と続いた。

 パワハラでは、職場での上下関係を反映し「思い通りの動きができなかったため、医師から『死ね』と言われた」など、医師からの威圧的な言動や暴言による被害が多かった。また、人手不足を背景に「有給を希望しても断られることがある」など、厳しい勤務を強いられる実態も浮かんだ。

 カスハラでは、「利用者から怒鳴られ、指摘されたことを復唱するよう強要された」「患者が怒って『バカ』と言ってくる。長時間居座る。1人で対応させられる」など、患者と利用者からの理不尽な要求や暴言が多かった。また、セクハラの被害も患者と利用者からが多い。「患者から体を触られた。主治医に訴えても注意してくれない。退院もさせない」「利用者の介助中、抱きつかれたり、腰や二の腕を触られる」など、深刻な記述もあった。

 県庁で会見した県医労連の浜島ちか子副委員長は、県内の病院に勤務する20代の女性看護師が、入院する高齢の男性患者の検温をする際に、胸を触られそうになったり、「陰部を触らせてほしい」と言われたりする事例を紹介。「患者を怒らせるわけにもいかず、うまくかわさなくてはいけない。その場をしのいでも、次の勤務で同様の対応が待っている。夜勤をこなし慢性疲労が強い仕事に、さらにストレスを加えている」と話した。

 県医労連は、大村秀章知事あてに医療や介護現場でのハラスメント防止への啓発などを求めた要請書を提出。県は現在、カスハラ防止条例の制定を進めているが、要請書ではカスハラに限らず、ハラスメント全体を禁止する条例の制定を求めた。