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【愛知】現場から/女性の起業 広がる支援

2017/01/30

県内で勉強会や人材発掘「学童保育充実を」の声も

 女性の起業をさまざまな面から支援する取り組みが、県内でも広がっている。女性の視点をビジネスにつなげる勉強会や、働く女性の家族らに家事の方法を教える会社もある。新しい働き方や起業を考えるきっかけづくりにつなげる狙いだ。 (稲沢通信部・花井康子)

 ■「不満」をビジネスに

 「ピンヒール保険、というのはどうか」

 1月上旬、名古屋市中区のイーブルなごやで起業を考えている女性らを対象に開かれた「女性ビジネス研究会」。参加者の提案に会場が盛り上がった。

 ピンヒールがマンホールの穴にはまり、けがをしたり、ヒールが壊れたりするのは女性の多くが感じている不安の1つ。それを逆手にとり、商品にするアイデアだ。

 研究会は名古屋市が本年度から3年計画で始めた中小企業支援のプロジェクトの一つ。1、2月で計3回あり、市内で起業を考えている女性らが専門家や成功者の話を聞き、起業の方法を学ぶ。

 この日のテーマは日常の「不便」「不安」「不満」をビジネスに生かすこと。入り組んだ東京の地下鉄の駅で、いつもベビーカーを押しながら大変な思いで移動していた母親が、できるだけ楽に移動できるように詳細で分かりやすい案内板を製作し、駅で採用された事例や、多くのチラシを見なくてもスーパーの特売日や商品をネット配信し、大ヒットした女性起業家の事例が紹介された。

 研究会を市から委託されている「NPO法人ビタショコ」の伊藤麻美副理事長は「女性の不安や不満は共通しているものが多く、ビジネスの種の宝庫」と話す。

 ■増える社長

 県も2015年度に「あいち・ウーマノミクス推進事業」を立ち上げ、女性起業家や管理職らを集めモデルとなる人材を発掘中。16年度には女性の起業を促すビジネスプランコンテストを開いた。

 昨年6月の東京商工リサーチの発表によると、起業家を含む県内の女性社長は1万5974人で前年より1076人増えた。

 伊藤さんによると、起業は在宅勤務などで比較的自分で時間を確保でき、家事や育児に追われる女性も仕事を続けやすい。「女性の社長は女性従業員を雇う傾向がある」といい、「女性の雇用が拡大する」とメリットを強調する。

 ■家事をサポート

 ただ、家事や育児のために仕事をあきらめる女性が多いのも事実。愛西市の上田伸美さん(48)も子育て中はパートなどに限っていたが、長男が高校を卒業した約6年前、「主婦の経験を生かし、働く女性を助けたい」と家事をサポートする会社「ジェニモ」を興した。

 家事代行だけでなく、働く女性や家族に掃除や収納方法などを伝え、家族で楽しみながら家事ができるようにするのが特徴。当初は赤字が続いたが、家庭に合わせたきめ細かなサービスが評判になり、3年目で黒字になった。

 県内の女性起業家の先駆けの1人で、司会者の経験を生かし、約20年前に講演や司会を請け負う会社「フロム・サーティ」を設立した池崎晴美さん(52)=蟹江町=は「以前に比べ、女性が起業する環境は良くなっている」と指摘しながらも「保育所だけでなく、小学生を預けられる学童保育の充実や家事サポートなどさらなる支援が必要」と話す。