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【暮らし】社員元気で会社は好調 脱・座りっ放し職場

2016/11/24

 仕事中の座り過ぎは健康に悪影響があるとして、オフィス環境を変える企業が増えてきた。立って作業できる机を導入したり、体を伸ばせる遊具を置いたりといった工夫を凝らしている。社員の健康増進を業績アップにつなげる健康経営の考え方や医療費削減の観点からも注目されている。

 東京郊外に本社を構える楽天。オフィスでは、座って作業をする人に交じり、自分の好きな高さの机に向かい、立って仕事をする人の姿が目立つ。

 昨年本社を移転する際、「座り続けるのは体に悪い」という考え方から、高さを自由に変えられる机を導入。大柄な外国人の社員も増え、日本の標準的な机では合わない人が出てきた事情もあった。

 立って仕事をすることに対し、「立っていると周りが見え、コミュニケーションが取りやすい」「姿勢を変えることで発想や気分を変えられる」などと、社員の反応は上々。特に長時間デスクワークをするエンジニアの利用が多い。

 電線大手のフジクラは小学校の校庭などに置かれ、ぶら下がって遊ぶ遊具の「うんてい」を職場に設置した。パソコン作業を続け猫背になった体を伸ばしリフレッシュしてもらおうという配慮だ。

 「打ち合わせで行き詰まると『うんていやろうか』という話になる」(人事担当者)。女性社員(25)は「体が伸びて気持ちがいいし、気分転換になる。男性も結構ぶら下がってます」と話す。

 同社は2009年から、社員の健康を会社の活力につなげる取り組みを開始。歩数計の配布などを通じ、意識を高めてきた。医療費増の要因にもなるメタボと判定される社員が減ったほか、売上高、営業利益なども伸びた。

 NTTソフトウェアはオフィスの壁を取り払い、サッカー場並みの全長110メートルの通路を障害物なく歩けるようにした。「席にいるかどうかがすぐ分かるので、気軽に立ち寄って打ち合わせができる」(同社)。社員からは「歩く習慣が身に付き、普段も運動するようになった」といった声も上がる。

 座り過ぎ防止の取り組みの背景には「長時間座っても心地いい椅子作り」を追究してきたオフィス家具業界の反省がある。「椅子を良くしても肩こりや腰痛を訴える人を減らせなかった」とオフィス家具大手イトーキの担当者は言う。同社は日常の仕事の中で体を動かす「ワークサイズ」を提唱する。

 早稲田大の岡浩一朗教授(健康行動科学)は、長時間座ったままで行うパソコン作業などの弊害に警鐘を鳴らす。「週末に運動しているから、平日はじっとしていても大丈夫と思いがちだが、それは間違い。心疾患や糖尿病などのリスクが上がることに気付いてほしい」

◆国も後押し「健康経営」

 社員の健康増進を会社の成長につなげようとする考え方を健康経営といい、従業員の心身の活力を高めれば働く意欲が増し、業績や企業価値も上がると見込む。企業イメージ向上による人材確保や将来の医療費抑制を狙う。

 経済産業省と東京証券取引所は今年、社員の健康管理に優れた企業25社を「健康経営銘柄」として選んだ。また、健診受診率などの目標を達成した企業を「健康経営優良法人」に認定し、低金利融資などが受けられる制度も始まる。

立って仕事をする社員が目立つ楽天のオフィス=東京都世田谷区で
立って仕事をする社員が目立つ楽天のオフィス=東京都世田谷区で
昼休みに、うんていで体を伸ばすフジクラの女性社員=東京都江東区で
昼休みに、うんていで体を伸ばすフジクラの女性社員=東京都江東区で