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【暮らし】<なくそう長時間労働> シフト見直し、残業35%減

2016/11/21

 長時間労働はオフィスワークだけにとどまらない。働く時間を区切ったシフト勤務で、長時間労働とは無縁と思われがちな工場などの現場労働でも、人手不足などにより残業・休日出勤が日常化している。勤務体制の変更と設備投資により、残業を35%減らしたある工場の取り組みを追った。

 ◇ ◇ ◇

 「希望していた現場に戻ることができて、子どもと過ごす時間も確保できる。暮らしのリズムに合っています」。製菓大手カルビーの各務原(かかみがはら)工場(岐阜県各務原市)で働く川瀬祐苗(ゆうか)さん(30)は、笑顔で話す。12年目の正社員。夫とともに3歳の息子の子育て中だ。今はポテトチップスの包装工程で、昼のみのシフトで働く。

 この工場では2015年まで、残業と休日出勤が常態化していた。

 製造ラインを時間通りに止めても、機械を手作業で清掃しメンテナンスを行うため、残業にずれ込みがちだった。本社から示される目標生産量は、平日だけでは達成することができず、休日にもラインを動かすことが常態化。従業員は月平均1、2日は休日出勤していた。

 さらに、この工場は従業員約260人中で常に十数人が子育てによる時短勤務か育児休業中。復帰しても残業や休日出勤は難しいため、シフト勤務ではない部署に異動させていたが、ポテトチップスの微妙な品質管理を知る人材が現場を離れることも痛かった。

 昨年7月から始めた改革の第一は、休日に働かなくても生産量を落とさないように、平日のシフトを2交代から3交代にして、夜の操業時間を延ばしたこと。人件費などのコストが増えるのを避けるため、設備投資で省力化も並行して実行。手作業だった段ボールへの詰め込みに機械を導入し、自動化率を3割から9割に上げた。人員を抑えながらシフトを増やすことができた。

 第二に、子育て中などの事情のある人は、働ける時間帯にシフトを固定し、必要な人材を現場で活用できるようにした。

 第三に、互いに作業をカバーしやすいよう、複数の工程をこなせる「多能工」の育成にも力を入れた。技能習得を促すため、多能工には手当を増やす給与体系も導入し、残業が減っても給料は減らさないようにした。

 同社によると、改革開始から1年目で残業時間は35%減り、生産量は15%増えた。生産性では7割アップした計算という。

◆まずニーズ把握「育児中でも状況は多様」

 働き方にハンディがあっても力を発揮でき、残業を減らして、しかも生産量を落とさない方法はないか-。難問を解こうとしたのは、2015年4月にポテトチップス製造課長に、他の工場から転勤してきた溝口誠さん(46)=現工場長=だった。

 まず取り組んだのは、皆がどんな働き方を望んでいるか知ること。異動2カ月前から工場に通い、育児休業中の従業員とも個別に面談した。「同じ子育てでも、家族のサポートのありなし、パートナーの仕事の状況など背景はさまざま。それを知る必要があったから」と言う。

 育児休業中以外の従業員からも「きちんと土日に休めるなら、平日夜に働く方がいい」という声が多いのが分かったという。

 溝口さんは「投資も重要だが、働く側にも新しい仕事を学習する姿勢がないとうまくいかない。1人1人の個性を知り、その意欲を高めることを考えている」と話す。

 (三浦耕喜)