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【地域経済】子育てに理解ある上司 イクボス増殖中

2016/10/13

アイシン精機 面談し仕事シェア 社内カフェで勤務希望

 自動車部品大手のアイシン精機(愛知県刈谷市)が、子育て中の部下に理解のある上司を育成する「イクボス塾」を開講して1年がたった。管理職たちが塾生となり座学ではなく、実際の各職場で部下が仕事と子育てを両立できる理想の職場づくりに取り組む。業務分担による部下の負担軽減や、気軽に部下との会話がはずむ社内カフェの立ち上げといった職場環境の改善にもつながっている。(岸本拓也)

 ◇ ◇ ◇

 9月26日、愛知県刈谷市の本社で開かれたイクボス塾の成果発表会。「女性の部下の業務シェアを進めたことで、効率が1・2倍になった」。第一電子技術部の佐藤謙一さんは、一期生として1年間学んだ成果を管理職ら約150人を前に力説した。

 佐藤さんは、子育て中で時短勤務の女性部下ら全員と面談し、仕事が個人任せになっている実態を把握。各自が抱えた仕事を洗い出し、業務を分担できるようにマニュアルを作成した。「チーム全体で仕事をシェアでき、職場の雰囲気も良くなった」と佐藤さんは振り返った。

 イノベーションセンターで企画・開発を担当する嶋崎亨さんは、部下とコミュニケーションを深めることを重視し、職場フロアにコーヒーやお茶を飲める簡易なカフェを立ち上げたことを紹介。「ちょっとした発想を気軽に話すことで、良いアイデアにつながっている」と狙いを説明した。

 話し合いで浮かんだアイデアを素早く具体化するため、社員の固定席をなくして、自分で選んだ場所で仕事をする「フリーアドレス制」も採用した。会話の機会が増えたことで、なかなか言い出しにくい在宅勤務を希望する女性の部下も出てきたという。

 アイシンは、女性の活躍が企業の成長につながると考え、現在は40人の女性管理職を5年後に倍近くに増やす目標を掲げている。2014年に女性活躍推進プロジェクト「きらり」を開始。その中で上司の意識改革が不可欠として、15年9月に「イクボス塾」を立ち上げ、各部門の課長以上の管理職22人が一期生となった。

 一期生の成果は「秘伝書」として取りまとめ、すべての管理職で情報共有し、今後に生かしていく。発表会を聞いた三矢誠副社長は「取り組みを続けることで、女性はもちろん、アイシンで働きたいと思う多様な人材が集まる好循環をつくりたい」と話した。

イクボス塾での成果を発表する管理職=愛知県刈谷市で
イクボス塾での成果を発表する管理職=愛知県刈谷市で