2016/09/30
金属精密部品の加工を手掛ける各務原市蘇原寺島町の「大堀研磨工業所」が先月から、野菜生産に乗り出した。航空機やF1自動車の部品加工で培った緻密な品質管理を“畑違い”の栽培に生かし、地元を中心に販路拡大を目指している。
会社の事務所から、100メートルほど離れた第2工場の2階にある「野菜工場」。広さは約120平方メートルで、発光ダイオード(LED)の照明がまぶしく照らす棚の上に、野菜が植えられたトレーが整然と並ぶ。野菜生産には59人の社員のうち3人が携わり、サラダに使われるベビーリーフとマイクロリーフ、食用花「エディブルフラワー」を栽培している。農薬は一切使用していない。
本業である金属部品の研磨は細かい作業が多く、目に大きな負担がかかる。部品の持ち運びにも相応の体力が必要だ。会社は2年前から、定年を迎える社員が継続して働ける職場として、野菜の栽培に着目。今年6月、工場の空き部屋を野菜の栽培用に改装した。
会社は航空宇宙関連の参入に必要な品質管理の規格「JISQ9100」を2010年に取得するなど、技術と品質管理の細やかさは国内企業でもトップクラス。野菜工場でも精密部品を造るイメージで管理を徹底した。壁には米国航空宇宙局(NASA)が開発した断熱シートを使用。出荷までの日数、肥料をやった量や間隔を記録に残す生産履歴管理(トレーサビリティー)はもちろんのこと、温度、湿度も1日3回チェックする。定期的な細菌検査は、精密部品生産のノウハウから取り入れた。
「データに基づいた品質管理や細かな作業は、研磨に似ている。要領が分かっているので、社員の意欲も高い」と、野菜栽培を担当する常務取締役の大堀恵三さん(42)は胸を張る。
野菜は1日約4キロ生産し、「ひこうきやさい」の名称で市内の洋食店四店に出荷している。工場や近所の喫茶店でも毎日販売しているが、毎回完売するほどの人気ぶりという。大堀さんは「まずは安定供給を続けて、地域にブランドを定着させるのが目標。健康志向は高まっているので、生産量と品目も順次増やしていきたい」と意気込んでいる。(問)大堀研磨工業所=058(389)1811
(宮崎正嗣)
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