2016/10/03
介護職場の人材難解消のため、主婦や元気なシニア層に活躍してもらおうとする動きが広がっている。施設の掃除や利用者の誘導役など、まずは知識と経験がなくてもこなせる仕事を任せ、介護福祉士ら専門職の負担軽減につなげる狙い。シングルマザーを介護職場で積極的に受け入れようと、専用の寮を用意した事業所もある。
「ほら、お団子が膨らんできた。おいしそうにできましたね」。東京都江東区の「デイサービス清澄邸」でケアアシスタント(CA)として働く柳堀幸枝さん(67)が、お年寄りに気さくに声を掛けた。この日は、利用者が午後のおやつとして白玉団子を手作り。柳堀さんはお年寄りに付きっきりで、粉をこねたり、ホットプレートで焼き上げたりするのをきびきびと手伝って回った。
CA職は、関東以西の各地で介護サービス事業を展開するパソナライフケア(東京都)が、介護人材不足解消の新たな職種としてこの2月から育成に取り組んでいる。子育てを終えた主婦や余力のある定年退職者らに2日間の基礎的な介護研修を行い、人手不足に悩む事業所に派遣する。半年から1年働いてもらった上で、事業所側が職場環境改善に効果があると判断した場合、直接雇用に切り替える仕組みだ。
CA職の担当は、利用者に対する誘導、散歩の同行、レクリエーションの補佐、掃除、洗い物といった資格や経験がなくてもできる仕事。これにより、従来の職員が、身体介護を中心とした専門業務に集中できるようにする。職員の負担を軽くし、離職防止につなげる目的もある。同社は現在、新事業の狙いについて業界にPRを進めている段階だが、既に複数社へ数人の派遣実績があるという。
柳堀さんは、子育てしながら美容師や一般企業勤めを続けてきた元気シニア。以前、美容師の経験を生かして散髪のボランティアをしたことがあった介護施設に興味を持ち、ことし3月から週2~3日、1日6時間の勤務をこなす。「趣味の民謡や洋裁を楽しむ時間を大事にしながら、他の職員さんとのチームワークの中で、人の役に立つ仕事をしていると実感できる」と張り合いを語った。
CA職導入では、未経験者が仲間に加わることへの現場職員の理解がカギとなるが、清澄邸の柴田富佐子施設長(47)は「仕事の分担表を作成するなど、事前の綿密な打ち合わせで円滑に受け入れられた」と説明。職員の仕事に余裕が出たことで「外出やおやつ作りといった手間がかかるサービスの回数を増やすことができた」と評価している。
◇
東京都町田市の社会福祉法人合掌苑は、特別養護老人ホームなど、同法人の介護施設に就職を希望するシングルマザーとその子どもに入居してもらう寮を同市内に開設した。床面積200平方メートルの木造2階建てに5室を整備。正社員は介護職員初任者研修を修了していること、非正規の場合は資格を問わず、週30時間以上働いてもらうことを条件に、今秋から本格的な募集を始める。
東京都と神奈川県内にシングルマザー専用シェアハウスを運営する一般社団法人ペアレンティングホームが設計や運営に協力。共用の台所、食堂は広いスペースを取り入居者同士が交流しやすいよう配慮した。
合掌苑によると、シングルマザーにとって賃貸物件を借り、子育てに理解がある正規雇用の職場を見つけることがなお難しい状況であるのに着目。「お母さんたちの仕事と子育ての両立、さらに介護職確保につながれば」と、専用寮開設に踏み切ったという。
(白鳥龍也)
転職・求人情報検索(名古屋市・愛知県・岐阜県・三重県)はトップから