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【暮らし】働く親の味方、富山市の「休日保育」

2016/09/02

 共働き家庭からの要望が強い休日保育。中部9県では実施自治体が4割に満たない中で、富山市の充実ぶりが目立っている。公立民営化の際に実施を後継法人に義務付けたことや、保育士不足が大都市ほど深刻でないため、ある程度余裕を持って保育士を採用し休日出勤に備えていることが背景にありそうだ。

 市東部の住宅地と田畑が混在する地区にあるわかくさ保育園。「もう1回やろ」「待って」。8月下旬の日曜日、園内のホールからマットや滑り台で遊ぶ子どもたちの元気な声が響いた。

 この日は0~5歳児の18人が登園した。「今日はいつもより少ないですね。夏休み最後の日曜なので、仕事を休んだ親が多かったのでは」。山崎美和子園長が話す。1日平均30人、多い日には50人が利用する。

 この日出勤した保育士は6人。休日保育を実施するため、園は国が最低基準と定める保育士人数より多い人数を雇用しており、休日出勤した保育士は平日に代休を取る。山崎園長は「保育士確保は一苦労だが、職員のやりくりはできている」と言う。

 午後四時半すぎ、近くに住む男性(43)が3歳の娘を迎えに来た。自身は飲食店を営み、妻は美容師。ともに日曜日は仕事があるため、毎週預けているという。「本当に助かります。2人とも働かなければ家計は厳しいが、預け先がなければ仕事は続けられません」

 市内の実施施設は、認可保育所と認定こども園計89カ所の3割以上の28カ所。休日保育に定員を設けている自治体もあり、希望者が多いと利用できないが、富山市では休日保育の実施施設の園児であれば事前申請のみで必ず利用できる。事前に希望調査を行うなどして、保育士を確保しているためだ。利用料は、平日も含めて週六日間なら基本的に発生しない。

 ただし、休日保育を実施していない61施設に通う子どもは休日1時保育を利用することになり、1日最大6000円かかる。土日祝日に仕事がある親は、子どもを休日保育を実施する28施設から選ぶことになり、希望する園に入れない事態も起きている。

 市子育て支援課によると、休日保育を実施する保育所が比較的多いのは、公立を民営化する際の条件として、休日保育と延長保育の実施を後継団体に義務付けてきたため。酒井秀祐課長は「休日の保育需要を見込んで民営化を進めたのが良かった」と話す。

 富山県内の保育所でつくる県保育連絡協議会の小島伸也会長によると、実施前には「自分の子どもはどうすればいいか」という反発が職員から出たが、自園で預かれるようにして理解を求めた保育所もあったという。

 富山市のような地方都市では、保育士不足が大都市部より深刻でないことも背景にある。富山県児童青年家庭課によると、同県内の保育士養成校の卒業生は、ほとんどが地元の保育所に就職している。新規の保育所開設はあまりないため、休日保育や延長保育などニーズの高いサービスに対応できているという。

 (寺本康弘)

【中部地方の休日保育実施状況】 本紙が県ごとに自治体の割合を調べたところ、高い順に▽富山80%▽石川74%▽福井59%▽滋賀58%▽愛知44%▽三重38%▽静岡31%▽岐阜24%▽長野23%-だった(調査は県によって2014~16年度)。富山県は、国が休日保育の補助金をつくった1999年度の8年前から独自助成を行ってきた。

休日保育で登園し、元気に遊ぶ子どもたち=富山市町村のわかくさ保育園で
休日保育で登園し、元気に遊ぶ子どもたち=富山市町村のわかくさ保育園で