2016/07/13
◆「休業」の分割取得可能に
親の介護が必要になったなどのために、働く人すべてに適用される法定の介護休業制度が8月以降、順次改正される。仕事を休む間、雇用保険から支払われる介護休業給付金が引き上げられるほか、来年1月からは、今は最長3カ月の1回しか取れない介護休業が、分割で取得できるようになる。国側が、介護の実情に合わせて、より制度を利用しやすくする。2回にわたり主な変更点を解説する。
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介護と仕事の両立支援は、安倍政権が掲げる「介護離職ゼロ」を実現するための重要施策の一つ。支援拡充のため雇用保険法、育児・介護休業法が今年3月に改正された。
このうち、介護休業給付金の引き上げは8月から行われる。介護休業は、家族介護の態勢を整えるため取ることができるまとまった休み。ただ、会社側にはその間、給与を払う義務はなく原則無給になってしまう。これを救済するため、雇用保険は賃金の40%を働く人に給付している。8月1日以降に取得し始めた人には、率を67%に高める。
もう一つの改正点は、休みの取り方に関すること。介護休業は介護が必要な人一人につき一回のみで、最長93日間までとされていたが、来年1月からは、3回に分けて取ることが認められる。
働きながら介護を経験した人に対する厚生労働省の委託調査(2015年)によると、介護休業を取得した人の約6割が実際に休んだ期間は「1カ月以内」と答えた。厚労省は、こうした結果を踏まえ「介護の始まる時期と終わる時期、その間の時期のそれぞれに1カ月程度の休みが取れるよう配慮した」(育児・介護休業推進室)としている。
一方、家族の通院の付き添いや介護サービスを受けるための手続きなどで、一日単位で年5日まで取ることができる介護休暇は、来年1月から半日単位(最大10回)での取得を可能にした。
このほか、短時間勤務やフレックス勤務、時差出勤など、介護する人のために会社側に義務付けられた労働時間短縮の制度も緩和する。
◆少ない利用者「職場の理解不可欠」
総務省の就業構造基本調査(2012年)によると、働きながら介護をしているのは約240万人。うち介護休業を取ったことがあるのは3・2%、介護休暇は2・3%とごく少数だ。
要介護4の実母(81)を在宅で介護している東京都内の会社員女性(44)は、約6年に及ぶ両立生活の中で、介護休業、休暇とも取った経験がない。「介護休業は1回きりなので、いつ取るのが最善か判断しかねていた。介護休暇は何とか有給休暇で間に合わせていた」と話す。
今回の制度改正は「改善したとは思うが、急な状況変化に対応できる制度にはまだなっていない」と指摘する。その理由は「結局のところ、利用するには上司や同僚の理解が不可欠」とし、国に対して「企業への啓発をもっと進めてほしい」と訴えている。
(白鳥龍也)
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