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【経済】未来へ2016参議院選/くらしと経済 格差是正し女性活用

2016/06/30

OECDシニア・エコノミスト
ランダル・ジョーンズさん

 -アベノミクスの成果をどうみる。

 大胆な金融緩和など「三本の矢」は正しい方向だった。国内総生産(GDP)の(物価の上昇を考慮しない)名目成長率は2%台を達成した。アベノミクス前はゼロ成長だったので前進だ。国と地方政府の基礎的財政収支の赤字も2013年にGDP比7・8%あったが、15年に4・8%に縮小した。

 ただ金融緩和は賃金上昇には十分につながっていない。成長率も物価上昇を差し引いた実質ベースでは政権発足以来、平均0・5%と高くない。政権が目標にする2%達成には「三本目の矢」の成長戦略をもっとやる必要がある。喫緊の課題は労働市場改革だ。

 -なぜ労働市場改革か。

 正規と非正規社員の二重構造が問題だ。特に女性は、大学卒でもパートなどで働いているケースが多い。他の先進国ではみられない現象だ。非正規は正規に比べ賃金が4割も低く、社会保障も不十分。企業が能力向上のための教育を十分に受けさせないことも多い。これらが女性の働く意欲をさらにそいでおり、経済成長の妨げになっている。労働力が減っていくのだから、女性や若者の能力を活用する必要がある。

 非正規と正規の格差縮小が必要だ。非正規の人も研修を受け、キャリアアップできるようにするのが望ましい。一方、正社員が保護されすぎていると、企業が非正規ばかり増やすので、この点も見直しが必要。期限付きで外国人労働力ももっと活用すべきだろう。

 -経済協力開発機構(OECD)は予定通りの消費税再増税を首相に提言した。

 日本はGDPの2・3倍もの政府債務を抱え、OECD加盟国で最悪。国債の信用が低下すると金利上昇で苦しくなるので「2020年度に基礎的財政収支は黒字にする」との目標は守らねばならない。具体的な黒字化の道筋を示すべきだ。


 消費税率は景気に急激な影響を与えないよう年1%ずつ段階的に上げ、最終的に15%以上にするのが望ましい。子育て支援、介護など成長力向上に必要な財源も確保できるので、中長期的に日本にプラスだろう。 (聞き手・池尾伸一)

 
【OECDシニア・エコノミスト/ランダル・ジョーンズさん】1955年生まれ。米ミシガン大経済学博士。経済協力開発機構(OECD)で日本と韓国の経済分析の責任者を長年務める。安倍晋三首相が4月に開いた国際金融経済分析会合にグリア事務総長と共に出席。