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【暮らし】勤務のストレス癒やす 病院などで取り組み始まる

2016/02/19

 勤務が過酷な病院や介護施設などで、働く人のストレスを癒やす取り組みが始まっている。専門家が肩や腰をマッサージしてほぐしたり、より良い睡眠や入浴の方法をアドバイスしたりして、明日に疲れを残さないようにするのが目的。昨年12月には企業に従業員のストレスチェック実施を義務づけたこともあり、同様の取り組みは広がっていくとみられる。

 午前10時、名古屋市中区にある名城病院の会議室に、夜勤を終えた看護師が次々と集まってきた。室内には、3台の簡易ベッドが並べられ、かすかなオルゴールの音が響く。


 「すごく凝ってますね」。薄明かりの中、スタッフが看護師や医師の肩や腰を入念にもんでいく。1セット約15分。全身がほぐれた看護師は「ふう」と大きく息を吐いた。外科の看護師(40)は「気持ち良くて、眠くなっちゃいました。今日はすぐ眠れそうです」とうれしそうに話した。

 ケアしたのは一般社団法人日本疲労メンテナンス協会(同市)のメンバー。代表理事の成山(なりやま)春江さん(50)が2013年から始め、この病院では月2回、希望者にマッサージしている。

 成山さんは、別の病院に25年勤務した元看護師。管理職になって負担が増して勤務時間も不規則になったため、4人目の子が小学校に入るのを機に退職した。看護師不足の中で、「現役の看護師の負担を軽くしてあげたい」との思いから、主に看護師の体と心をケアする事業を思い立った。


 看護師は、夜勤による体力的な厳しさに加え、年々高度化する機器の扱いや、多種多様な薬を間違えずに投与することの精神的な負担も大きいという。日本医療労働組合連合会の13年度の調査では、看護職員の75%が「仕事を辞めたい」と感じ、その44%の理由が「人手不足で仕事がきついから」だった。

 活動を通じて驚いたのは、「疲労を自覚していない人が多いこと」と成山さん。普段の睡眠と休日に疲労やストレスを解消できないと、次第に蓄積されていき、「突然会社を休むことにつながる」と危ぶむ。

 協会は、脈拍や心臓の鼓動から、疲労やストレスを測定する機器を導入。どの程度疲労がたまっているのか分析し、睡眠や入浴、音楽鑑賞など仕事以外でのリラックスの方法をアドバイスしている。看護師以外にも保育士や介護士らを対象に指導している。

 成山さんは「ストレスや疲労が慢性的な人に早く気付いてもらえるようにしていきたい」と話す。

 協会は、26~28日に名古屋市東区のナゴヤドームで開催される「ハッピーママフェスタ」に出展し、来場者のうちで希望した人を対象にストレス測定を行う。

 (寺本康弘)

【ストレスチェック制度】 労働安全衛生法の改正で、従業員50人以上の事業所に対し、質問票を従業員に記入してもらうことを通じてストレスの状態とうつなどの不調を調査することを義務づけた。ストレスが高い人には医師が面接指導する。事業所はストレスチェックと面接指導の実施状況を毎年、労働基準監督署に報告しなければならない。

夜勤の疲れを取るため、首をもんでもらう看護師ら=名古屋市中区の名城病院で
夜勤の疲れを取るため、首をもんでもらう看護師ら=名古屋市中区の名城病院で