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【社会】就活日程繰り下げ 中小 新卒採用に苦戦

2015/10/28

来年の「前倒し」方針も疑問視

 経団連による就職活動日程の変更や人手不足の影響で、多くの中小企業が採用難に直面している。悪影響が出たという批判を受け、経団連は早くも2017年春新卒を対象に、採用選考活動の解禁時期を前倒しする方針だが、「どこまでその日程が守られるだろうか」と改善効果を疑う声が上がっている。(坂田奈央)

 「学生のスケジュールが過密になっている」。27日に名古屋市で開かれた愛知中小企業家同友会(名古屋市)による合同企業説明会。参加したサン樹脂加工(愛知県小牧市)の磯村太郎社長(48)が指摘した。

 今年は会社説明会の解禁時期が3年生の12月から3月に遅れたことで、3月以降に各社の説明会が集中。学生は急激に忙しくなった。「選考に来ると言っていたのに来られない学生もいた。一番気の毒なのは学生だ」と磯村社長。同社は最近、ようやく1人に内定を出せた。

 同会の会員企業(3765社)は今年、経団連が新たに導入したスケジュールにのっとった。6月と9月に実施した合同説明会の参加学生数はのべ711人で、前年(3月と5月)の994人より3割も減った。外資など例年通りの日程で採用する企業も多く「結果的に会える学生の数が減った」(同会)という。

 宝製作所(愛知県大口町)の丹羽昭夫社長(50)は「大手と同じ土俵なのがつらかった」と言う。“選考活動の解禁”としながらも、実質的に各社が内々定を出した八月までの間、大手、中小を問わず面談の日程が重複。「これまでは大手が早く内定を出したので、安心して選考に臨めていた」と話す。同製作所の内定者は現在ゼロ。「こんな年はなかった」

 主役の学生も困惑する。就職活動中の名古屋市内の女子大生(22)は「なぜ先輩たちのように3年の12月から就活ができないのか。もっと企業を見たいけど時間が足りない。大学も休めず忙しい」と話す。愛知大キャリア支援課は「例年と比べて学生からの進路決定報告のペースが鈍い。まだ活動を続けている学生が多いのでは」とみる。

 経団連は現在、選考活動の解禁時期を8月から6月に早める方向で調整している。しかし、多くの中小企業経営者は冷ややかだ。

 採用支援などを行うリンクコンサルティンググループ(名古屋市)の和田康伯社長(50)は「今年も六月には多くの企業が選考を始めており、いわば実態に合わせただけ」と話す。ある経営者は「ルールを守った企業が苦労する状況を何とかしてほしい」と訴えた。

愛知中小企業家同友会の合同企業説明会=名古屋市中村区のウインクあいちで
愛知中小企業家同友会の合同企業説明会=名古屋市中村区のウインクあいちで