2008/11/18
米国発の世界的な金融危機に伴う企業業績の悪化で、新卒学生の採用内定取り消しが相次いでいる。「内定」って、企業側と戦える権利? 一方的に取り消された場合、どう対応すればいいのだろう。 (服部利崇)
「企業が一方的に内定を取り消すことなんてできるんですか」
ある企業から新卒採用の内定を受けている男子学生が、東京都のNPO法人「労働相談センター」に電話をかけてきた。同じ企業から内定をもらった別の学生が取り消され、不安になったという。
対応したスタッフの須田光照さんは「業績悪化のしわ寄せはいつも弱い人にくる」とやるせない表情。同センターには同様の相談が複数寄せられている。
内定取り消しは広がりをみせている。青山学院大では男子二人がそれぞれ別の不動産会社から内定を取り消された。明治大学は計四人で、業種は不動産のほかアミューズメント、情報通信と多岐にわたる。理由はいずれも業績不振。それを裏付けるように、就職情報誌のリクルートには「ここ数カ月で、複数の企業から『内定を取り消すことはできるのか』という相談があった」(同社広報部)という。
そんな事態をうけ、東京都渋谷区の就職支援会社「パソナユース」は大学四年生向けの就職相談室を設置し、不安を抱える学生のキャリア相談に乗っている。
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内定を取り消された場合の対応は? 学生個人が各都道府県にある労働局に企業への指導を求められるし、弁護士や労働組合、NPOに相談する手もある。
企業の自己都合による内定取り消しは、内定で成立した労働契約の一方的破棄になり、合理的理由がないと無効になる。労働弁護団常任幹事の君和田伸仁弁護士は「内定段階で、法的に労働契約は成立している。まだ実際に働いていなくても、その会社の従業員と同様の権利を持つ」と解説する。
厚生労働省「新規学校卒業者の採用に関する指針」でも、事業主に「最大限の経営努力などあらゆる手段」で内定取り消しを防ぐよう訴えている。しかし、業績不振が合理的理由になるかは、最後は個別判断だ。
自衛策も必要になる。企業から取り消しの連絡があった際、「『分かりました』などと発言をすると、労働契約の解除に合意したと企業に判断される可能性がある」と君和田弁護士。言質を取られない対応が求められる。
内定を取り消されても、その企業で働きたい場合は、労働契約が成立したことを証明できる証拠を集めよう。労働条件の書かれた採用内定通知が一番の証拠。労働契約は口頭でも成立するので、その旨を記したメモも証拠となりうる。
前出の須田さんは「中小・零細企業だと電話で内定を出す場合もある。いつ、誰と、どんな話をしたのかを思い出して書いたメモでも武器になる」。内定者研修の通知メールなど、企業からもらった文書も役に立つ。
証拠を集めたら、企業に労働契約を履行するよう求める。それでも撤回に応じない場合、従業員としての地位保全を求める仮処分申請や裁判を起こすこともできる。
その企業で働くことをあきらめた場合は、損害賠償請求の道もある。君和田弁護士は「内定取り消しで一年間就職が遅れたとして、一年分の給与相当額を請求するのも手だ」とアドバイスする。
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