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やってみました 記者たちの職業体験ルポ 埋文センター職員

2008/01/06

根気で歴史ひもとく

 弥生時代末期には西三河の中心地があったとされる安城市。当時の繁栄を物語るように、矢作川に近い市東部中心に多くの土器が出土する。古代ロマンを求め、市埋蔵文化財センターで出土品の整理を体験した。
 出土品を入れた箱やみたこともない道具がところ狭しと並ぶ。一通りの説明を受け、まずは注記。出土した遺跡名や場所などを一つ一つの土器片に記していく。大半はパソコンをつないだ特殊な機械で作業をするが、一部は昔ながらの手書き作業。細い筆に塗料を付けると、手が震えた。「上手、初めてとは思えない」と褒められたが、つぶれた文字に恥ずかしさを覚えた。

 続いて、土器の接合作業に挑戦。「これはくっつきますよ」と手渡された四つの土器片としばらくにらめっこを続ける。残っている筋や曲がり具合などを基に、一つの形を目指すが、答えのないパズルを解いているようだ。何度も失敗して、ぴたり。満足感が広がった。

 最後は実測に挑んだ。形を写し取り、最終的に報告書に掲載される大切な作業だ。題材に平安時代の碗(わん)を渡された。武骨な碗を手に、どんな人が使ったのか想像してみる。

 埋蔵文化財整理指導員の中西和子さん(52)が「スケッチではないんです。正確に描くことが大切」と一言。特殊な定規や真弧(まこ)と呼ばれる形を写し取る道具などを駆使して、方眼紙に原寸大の図を描いていく。「鉛筆は紙に直角にあてて。線を引くのは左から右へ」と細かなアドバイスが続く。割れた碗から元の形を再現し、釉薬(ゆうやく)の残り具合や砂や糸の痕跡などを書き込んだ。

 細かく、根気のいる作業の連続。黙々と作業を続ける職員に、歴史をひもとく仕事へのこだわりを感じた。(宇佐美尚)

    ◇

 メモ 市の臨時職員として勤務。欠員があると募集している。特別な資格や知識は必要ない。仕事の中で経験を積み、知識や技術を身に付けていく。地道な作業が多いため、「根気強い人」が向いているという。毎月16日ほど勤務。時給820円で、月に8万円前後の収入になるという。

土器の接合作業をする中西さん=安城市埋蔵文化財センターで
土器の接合作業をする中西さん=安城市埋蔵文化財センターで