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【長野】農業のワーキングホリデー人気 飯田市、シンプルさ売り

2008/11/01

都会の人たちが農繁期に農家に泊まり込んで農作業を手伝う、飯田市の「南信州ワーキングホリデーいいだ」が人気を集めている。同様の取り組みは全国に数多いが、農家が食事と宿泊を提供し、参加者が労働するというシンプルな「飯田方式」が受けてか、年々参加者が増えている。市は、この人気をさらに若年層の新規就農につなげよう、と意気込む。

 交通費は参加者持ちで賃金なし。農家は労働の対価として、食事と宿泊場所を提供する。農作業の「ワーキングホリデー」は全国に取り組みが広がっているが、観光と切り離し、ターゲットを農業に関心のある人に絞ったのは、飯田市独自の制度だ。

 この制度が始まったのは1998年。「交通費を自分で出してただ働きにくる人なんているのか」。当初は農家から戸惑いの声もあったが、年を追うごとに受け入れ農家も参加者も増えた。何度も参加する常連や、農家と直接約束して農作業に訪れる人も多い。昨年は市があっせんしただけで560人を受け入れた。10年にわたって参加者が増え続けているのは、全国でも極めてまれという。

 31日には、3泊4日の秋のワーキングホリデーが始まり、77人が農作業に励んだ。東京から訪れた斉藤光夫さん(62)は4回目の参加。「定年前から農業をしたいと思っていた。自然のいい空気の中で作業して、おいしいものを食べて健康になる。こんないいことはない」

 受け入れる龍江の果樹園主、吉沢剛さん(35)は「農繁期はとにかく人手が必要。費用もあまりかからず、農作業を目的に来るのでやる気があって仕事もはかどる」と喜ぶ。

 市の制度は気楽に参加でき、農作業をしっかりと体験でき、農家の生の声も聞ける。これまでは田舎暮らしに興味のある年配者が多かったが、最近では真剣に農業を始めることを考える20代、30代も増えている。

 市でもワーキングホリデーの最後に開く交流会で就農相談を開いたり、全国農業会議の「新・農業人フェア」に自治体としてブースを出したりと、新たな農業の担い手確保に力を入れている。

 (海老名徳馬)

リンゴの収穫の説明を受けるワーキングホリデーの参加者ら=飯田市で
リンゴの収穫の説明を受けるワーキングホリデーの参加者ら=飯田市で