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【暮らし】<はたらく>企業より起業で  増えるママ社長キラリ

2011/03/11

 母親が起業し、従業員を雇う「ママ社長」が注目を集めている。企業社会ではまだ少数派だが、家事や育児で気付いたアイデアをビジネスにしたり、従業員に柔軟な働き方を提供したり、小さくてもキラリと光る会社がある。 (服部利崇)

 「動かすときは腰を伸ばして」

 名古屋市の家事代行会社「アクションパワー」。女性スタッフの手を取り、掃除機の動かし方を教えるのは、大津たまみ社長(40)だ。

 五年前に離婚。引き取った九歳の息子の預け先がなく、就職面接で落とされ続けた。「雇ってくれないなら会社をつくればいい」

 事業のヒントは自分の経験。出産後、元夫の会社を手伝い、育児に家事にと奮闘した。「働く女性は忙しすぎる。誰か家事を手伝ってくれたら楽になるのに」。そんな思いをビジネスにした。

 開業資金は宝飾品を売り、生命保険も解約してひねり出した。2006年に起業したとき、事務所は六畳一間の「ボロボロのアパート」だった。

 「働く女性を支えたい」という経営理念を大切に事業の拡大を続け、前年度の年商は約3千万円。初年度の2倍に膨らませた。

 経営理念は、スタッフの雇用方針にも反映させている。スタッフ約20人のほぼ全員が子育て中のママ。「家族の幸せのための会社。家族のいる女性に生き生きと働いてほしい」

    ◇

 「育児や家事に忙しいママに、在宅でできる仕事を提供したい」

 東京都品川区の広告制作会社「スパルタデザイン」社長の唐松奈津子さん(31)は09年六月、新たな事業展開として育児グッズ通販サイト「マンマーニ」を始めた。

 商品を開発・製作するのは一般の母親ら。これまで約二十人が計百五十種類ほどを出品した。「市販品に物足りなさを感じるママが考えるだけに、かわいいデザインや実用性に秀でた商品が多い」と唐松さん。例えば飲み物ケース。赤い水玉のかわいいデザインに加え、バッグの持ち手やベビーカーに装着できるよう面ファスナーが付いている。

 サイトの売り上げは本業の広告制作に比べるとわずか。唐松さんは「ママにとっても小遣い程度の稼ぎだが、社会とのつながりができたと喜ばれる」と話す。

 大手情報サービス会社出身の唐松さんは08年に起業。同年、長女を出産した。職場は自宅。「プライバシーは制限されるが、娘との時間は取れる」。スタッフ4人のうち女性は3人。各家庭の事情に合わせ、早朝出勤や早退など柔軟な働き方を認めている。

掃除機の動かし方を指導する大津たまみ社長(左)
掃除機の動かし方を指導する大津たまみ社長(左)