2010/08/13
男性の育児休業取得が進まない大きな理由の一つに、休業中の収入減への懸念がある。
ブラザー工業アプリケーション開発部の田中元規(もとのり)さん(34)=名古屋市=は、同じ会社で働く妻が長男を出産した際、二週目の二〇〇七年十一月末から一カ月間、育児休業を取った。
育休中は無給。当時、雇用保険から出る育児休業給付金は賃金の30%で、住民税の支払いもあった。事前に減収分を把握した上で、貯蓄を取り崩すなどしてやりくりした。
育休取得を考える同僚の相談にも乗る田中さんは「ローンを抱えている人や専業主婦(夫)世帯では、あきらめるか、有給休暇消化の範囲で済ませる人が多い」。計画的にボーナスを蓄えることなどを提案するが「収入減が痛手となる家庭では、男性の育休取得は厳しい」と話す。
育休中は原則、会社から給料は出ないが、社会保険料は免除。制度改正で今年四月から育休給付金が賃金の50%支給されるようになり、収入減は徐々に緩和されてきた。
六月末に施行された改正育児・介護休業法では、専業主婦(夫)家庭の配偶者も、育休取得が可能となった。ただ唯一の家計の担い手が休めば、収入減の影響は大きくなる。
静岡県掛川市のメーカーに勤める藤森新五さん(43)は、〇五年一月に双子が生まれた際、会社独自の有給休暇制度「ファミリーフレンドリー休暇」(年五日)を活用した。「妻の妊娠中や入院中など必要なとき、収入減を気にせず、単発的に休みが取れた」と振り返る。
藤森さんは親と同居で妻は専業主婦。育児や介護で一カ月間仕事ができない状況になっても困らないよう「大きいローンは組まない」などのリスク分散を心掛ける。
有給の育休制度を設けている企業は、徐々に増えている。
ベネッセコーポレーションは、〇六年四月から育休の最初の二週間を有給にする制度を開始。今年四月からは、最初の三カ月間、基本給の半額を支給する制度に変更した。男性社員の育休の平均取得期間は、二週間程度から今では一カ月に伸びているという。
広報部の西沢順子さんは「早く帰って子育てを分担するため、仕事を効率的にこなし、生産性を上げようと意識するようになった、という声が寄せられている」と、会社側が有給の育休制度を整備するメリットを挙げた。
高島屋は二週間まで有給、INAXは、未取得の有給休暇を三十日間まで育休に回せる制度を〇六年から始め、これまで十四人の男性社員が利用した。
東レ経営研究所の渥美由喜(なおき)さん(42)は「増加が見込まれる育休部下への管理能力の向上も期待できる」と強調する。 (福沢英里)
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