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【三重】働く喜びひしひしと 自立目指す若者が農業体験

2010/07/14

 引きこもりやニートの若者への就労支援に取り組む伊勢市のNPO法人「いせコンビニネット」が、明和町竹川のハウス農園で、農業体験事業を進めている。自立を目指す20、30代の8人が小松菜の水耕栽培に汗を流している。

 作業に当たっているのは、同NPO法人が2008年に市内に開設した「いせ若者就業サポートステーション」に通う若者ら。

 コミュニケーションの不安などから社会への一歩が踏み出せない若者ら約160人が登録していて、同NPO法人は以前も、相談と並行し短期の就労体験事業を実施していた。

 しかし昨年末、事業に継続性を持たせて「もの作りを通して働く喜びを知ってほしい」と、地元農家や企業の協力を得て、比較的手間が掛からない水耕栽培による農業体験を始めた。

 8人は、同NPO法人の農場長小林慶士さん(31)の指導の下、パートと研修生の立場で交代で働いている。約2500平方メートルのハウス内には長さ約30メートル、幅70センチのプランターが24列に並び、収穫や出荷作業などに精を出している。

 当初は九条ネギを栽培していたが、4月からは栄養価が高く需要が増えているという小松菜に変えた。将来的には採算が取れるようにしたい考えで、商品はあえて、値段、品質などで競争の激しい松阪市の県地方卸売市場に出荷している。

 NPO法人によると、体験を通し、若者にも変化の兆しが見えてきた。ステーションの定期相談では、体験者から「家族との会話が弾むようになった」「毎日働きたい」といった前向きな言葉が聞かれるようになった。

 以前は調理関係の職に就いていた30代男性は「暑さは大変。でも作物が育つところが楽しいし、仲間と会話しながら作業している」と白い歯をのぞかせる。

 今後は、病院や福祉施設への納入で、採算面を安定させたい考えだ。小林さんは「みんなよくやっている。軌道に乗せて雇用の場として広がれば。収穫した小松菜を、地域の人にもぜひ味わってほしい」と話している。

 (渡辺大地)

自立へ向けて小松菜の栽培に取り組む若者=明和町竹川で
自立へ向けて小松菜の栽培に取り組む若者=明和町竹川で