2010/07/07
念入りにギアを整備
三河地方唯一の競輪場がある豊橋市。時速七十キロでトラックを疾走する選手の舞台裏をのぞいてみたいと、選手の愛車の点検と整備を担当する検車員の仕事を体験させてもらった。
出走するレースを待つ選手たちのピリピリとした雰囲気に気おされそうになりながら検車の事務所へ向かうと、つなぎを着た財団法人日本自転車競技会の検車員白木利光さん(43)=東海市名和町=が笑顔で出迎えてくれた。白木さんはこの道十八年のベテラン。早速“弟子入り”をお願いした。同会は中部六県・八カ所の競輪場から委託されてレースの審判や、競技用自転車の点検・整備、出場する選手の健康管理などの業務をしている。
検車員の仕事は、月に六日行われるレースに出場する選手約百人の競技用自転車に不具合がないかどうか、不正改造がないかをレース前に確かめることから始まる。まず、ハンドルやギア、ペダルの調子をチェック。特にギアの緩みは大きな事故を招きかねないだけに、入念に調べる。「全体重をかけてペダルを踏んで」。記者は額に汗を浮かべながら、思いきり踏み込む。その瞬間、白木さんは「ちょっと緩んでるね」。違いは全く分からなかったが、白木さんはすぐに特殊なレンチを取り出して「じゃあ、ギアを締めてみよう」。後輪ホイール部分のボルトを回そうとしたが、ひ弱な記者の腕では全く動かない。
記者が苦闘していたその時、レース中に選手が転倒したというアナウンスが。白木さんの顔に緊張が走る。直ちに転倒した自転車が事務室に運びこまれた。「次のレース走れますか」。白木さんに尋ねる選手は不安げだ。白木さんは特殊な工具でフレームやホイールのひずみを調整。「ペダルが傷んでるけど、問題ないよ」。選手の顔がほころんだ。
「一ミリでも部品にひずみがあれば大事故に直結する。僕たちの仕事にミスは許されないんです」。白熱した競輪レースを陰で支える職人の誇りが、白木さんの言葉にあふれていた。(池内琢)
【メモ】特別な資格は不要だが、検車員になるには同会に就職することが必要。大卒の初任給は20万円。「競輪への熱い思いが何よりも求められる」と白木さん。
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