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【流儀あり】国際交渉「読み」がコツ 三菱航空機・江川豪雄社長

2010/04/15

 製造業も国際化していくという確信がありましてね。日本だけで通じる仕事のやり方は早晩、時代遅れになると。

 入社当時、三菱重工は輸出に力を入れ始めたところでして。でも英語の契約書が分からないなんてことがよくあって困ってましたから、不利な契約もあったのでは。

 一念発起して「米国で勉強したい」と会社に頼んだら入社4年目から2年間、ワシントン大(シアトル市)のロースクールで学ぶ機会に恵まれました。

 私の年代でそんな人材はほぼいないわけで、日米共同開発のFSX(次期支援戦闘機)のプロジェクトが持ち上がった際、「名古屋航空機(製作所、現名古屋航空宇宙システム製作所)で、米国側との交渉窓口をやれ」と一本釣りされた。

 (米国子会社社長時も含めて)経験からいえる外国人との交渉のコツは、知力と気力と体力、あとは相手がどう考えているかの読み。向こうは作戦を持ってやってくる。机をたたいたり、泣いたり、人情に訴えたり。そういうものにあまり惑わされないこと。怒った顔して契約書にサインした途端、にこやかに「ステーキでも食いに行こう」なんてことがあるんです。

 (私は)営業でけんもほろろに追い返されても深刻にとらえないで、打って出る。人に会って話すのは全く苦にならない。外国人だけでなく、日本人でも楽しくて。英語ができるできないじゃなくって、会えば、話せば分かるやろという楽観的な気持ちがいつもあるもんだから。

 (海外を主要市場とする三菱航空機の)社長になったのは、朗らかでポジティブと評価されたからだと思うんですよ。(営業に行って)さすがに門前払いはないけど、「残念ながら自分の会社は小さい飛行機を導入する計画はないんだ」という経営者はいます。でも気にしない。

 航空業界(の景況)は昨年ひどかった。乗客の数や(全体の機体の)受注の数は、まだ本格的に回復してない。でも分かりませんしね、今後の経済状況は。

 航空機ビジネスも決断が速く進む時代になったから。環境性能に優れたMRJ(三菱リージョナルジェット)は本当にいい飛行機。そのうちいいことあるよというつもりでやってないと、いつもね。

 【えがわ・ひでお】 東大法学部卒。67年三菱重工業入社。米国三菱重工業社長、常務海外戦略本部長、副社長社長室長などを歴任。09年4月、国産初の小型ジェット旅客機「MRJ」を開発、販売する三菱航空機の社長に就任した。65歳。静岡県清水市(現静岡市)出身。