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やってみました 記者たちの職業体験ルポ 森林組合職員

2010/02/17

急斜面歩き境界画定

 森林が九割を占める設楽町。同町の津具森林組合の村松幹彦組合長に山の最大の問題を尋ねたところ、「所有者でさえ境界が分からないこと」との返答。公図と呼ばれる登記上の地図は明治時代に作られ、不正確。境界は所有者間の協議や代々の伝承で成立してきたらしい。しかし、木材価格の低下で山に人が入らなくなったため境界が分からなくなったという。そんな“荒れた”山で境目の明確化に同組合が乗り出したと聞き、同行した。
 「じゃあ、行きましょう」。大河内隆一さん(26)と小川晃徳さん(25)の両組合職員の案内で訪れた津具地区の森林。歩けるような道は、先にない。

 「一体どこへ」と思っていると、斜面を指さす二人。「傾斜は四〇度ってところかな」。後悔が込み上げた。

 首から下げたカメラと左手に持ったノートが煩わしい。斜面でもがく記者に「二足歩行だとひっくり返るから、四つんばいになって」と大河内さんから助言が飛んだ。「この仕事、体力勝負なんで」とも。

 リボンが巻かれた樹木の横で小川さんがポールを持つ。このポール目がけ、大河内さんがデジタルビデオカメラ様の機器からレーザーを放つ。この作業を繰り返し、位置や距離、角度を、衛星利用測位システム(GPS)を利用して小型パソコンに入力する。

 既に巻かれていたリボンは事前に複数の所有者が立ち会って定めた境界点を示しており、今回の作業はその点を結んで図面化するためという。記者も挑戦してみたが、作業自体はシンプル。ただ、駆け回る二人の速さにまったく追いつかなかった。

 同組合では本年度内に約百七十ヘクタールで境界を画定させるが、取り組まなければならないのは同地区で四千ヘクタール超。二十年はかかるという。「図面として出来上がるのがやりがい」と小川さん。「でも」と続けた。「境界が決まって終わりじゃない。所有者に山へ関心を持ってもらい、今の荒れた状態を整備してもらうのが最終目標です」(諏訪慧)

 【メモ】同組合では随時、職員を募集。必要な資格や年齢制限はないが、体力に優れているのが重要という。村松組合長は「山林所有者はじめ地元住民にとけ込める人を」と求める。給与は新卒で約18万円。県職員の基準を参考にしているという。