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【元気のタネ】街の時計屋復活 東海などで展開「ジェムウォッチ」

2010/02/17

 店舗廃業で第一線を離れた職人の技術を生かし、時計や貴金属、眼鏡の修理に特化して業績を伸ばす時計店のチェーンがある。愛知県清須市に事業の拠点を構えるツーネットが、東海地方を中心に48店を展開する「ジェムウォッチ」。社長の瀬口良人さん(62)の思いは、街から失われた個人商店の役割の復活だ。

 ジェムウォッチの前身は、瀬口さんが1990年に脱サラして始めた時計・貴金属・眼鏡の複合販売店。一時は順調に業績を伸ばし、店舗も3つに増やしたが、大手量販店との価格競争に限界を感じていた。

 「コストでは大量仕入れが可能な量販店にかなうわけがない」

 あらためて収益構造を分析し、修理事業の利益率が際立って高いことに着目。96年度に小売りからの撤退と、時計や貴金属の修理・リフォームに特化することを決意した。

 目指したのは“街の時計屋さん”の復活だった。「時計の電池を交換したくても、街に時計店がない。大量消費、効率化の論理の中で、個人商店が持っていた街の機能が失われている」。こんな思いから既に廃業した時計・宝飾店の店主、勤め先が廃業した修理職人らを雇用。主要な店舗に配置した。

 職人の確かな技術は好評を集め、ジェムウォッチの店舗で昨年1年間に取り換えられた時計の電池数は約21万個に上った。

 2002年3月期に1億円だったチェーン店全体の売上高は、10年3月期は約7倍の7億2000万円を見込む。最近はネックレスを指輪に作り直すなどリフォームの需要も目立ち、特に数珠の修理の依頼が増えているという。

 ジェムウォッチはこれまで、“のれん分け”の形でチェーンを拡大してきたが、4月からは新たに貴金属店の店主らをターゲットにしてオーナーを募集。フランチャイズ展開を始める。

 「人口が10万人の都市には、必ず店があるという店舗網の構築が目標」という瀬口さん。2年後には、現在の2倍の100店舗にすることを目指す。

 (細井卓也)

時計修理職人の作業を見守る瀬口良人社長(右)=愛知県清須市のジェムウォッチ須ケ口駅店で
時計修理職人の作業を見守る瀬口良人社長(右)=愛知県清須市のジェムウォッチ須ケ口駅店で