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【暮らし】第2のセーフティーネット 実態に即した支援を

2010/02/11

 雇用保険の救済網からこぼれた失業者を救うため、国が整備した「第二のセーフティーネット」。生活資金や住宅入居費などの貸し付け、支給など各種支援制度がある=表。ただ、これを理由に行政側が生活保護の利用を抑制したり、厳しい雇用環境に貸し付け条件が合致しないケースも出ている。利用者の実態に即した支援が求められる。 (佐橋大)

 「市役所窓口で生活保護を申請しようとしたら、別の制度を勧められ、なかなか申請させてくれなかった」。愛知県内の男性(43)は憤る。

 自動車関係の部品工場で働いていたが、昨年二月に失業。失業給付はなく、再就職先も見つからない。さらに夏ごろ、腱(けん)断裂で右肩に激痛が走って腕が上がらず、職探しどころではなくなった。電気やガス代も払えず、妻子を抱えた生活は、たちまち行き詰まった。

 職員が勧めた別の制度とは、第二のセーフティーネットの一つ「総合支援資金貸付」。失業者らに最長一年間、生活資金や就職活動費などを貸し付ける。ただ、連帯保証人がいないと、年1・5%の利子が発生する。

 「すぐに働いて返せる見込みもないのに借金?」と疑問を感じた男性は、愛知県弁護士会に相談。昨年十二月、弁護士が同行して再度窓口を訪れると、対応は一変し、生活保護の申請は受理された。弁護士費用は、法テラスの制度で日本弁護士連合会が負担した。

 男性は「窓口で肩の痛みを説明しても、理解してもらえなかった。肩を治せば働ける可能性も出て、納税者になれるのに」と唇をかんだ。

 「借金の返済が、男性の生活再建を阻害する可能性もあった。当然、生活保護を受けるケースだが、第二のセーフティーネットが盾に取られた」と、男性を支援する団体の関係者は指摘する。

     ◇

 別の制度で受けた融資の返済に、生活保護費を充てている人もいる。

 名古屋市の三十代男性は派遣切りで、昨年春に会社の寮を追い出された。そこで、住居を失った離職者を対象にした「就職安定資金融資」の制度を利用。労働金庫から、アパートの入居費三十万円を借りた。

 借りてから六カ月以内に就職し、雇用保険に入れば、大部分の返済が免除される。できなければ、年1・5%の利子を付けて返済する条件(半年以内は金利のみの支払い)だった。ところが、雇用環境は厳しく、再就職できないまま半年が経過。やむなく、十一月から支給を受けている生活保護費から、毎月約一万円を返している。

 相談を受けた労働組合の関係者は「生活保護費は最低限の生活を維持するためのお金。それを返済に充てるのは、就職活動の費用を圧迫し、自立を妨げることにならないか」と疑問を呈する。「不況の中、努力すれば半年で就職できるというものではない」として、返済の猶予を厚生労働省に求めている。

 同省就職支援室の担当者は「労働金庫側に猶予できないか打診している。ただ、労金の他の融資とのバランスもあり、この制度だけ猶予を認めるのは難しい」と話す。

 厚労省によると、昨年十一月十三日までに就職安定資金融資を利用した人は一万六百三十一人。このうち、初回融資から六カ月過ぎた人は五千八百三十人で、この間に再就職できたのは29・1%、千六百九十四人にとどまっている。