就職・転職ニュース
【社会】障害者と農業 素敵な関係 進む「農福連携」

2013/04/04
雇用確保と担い手不足解消 丁寧に仕事、収穫に喜び

 障害者の働く場として農業を活用する取り組みが、各地で広がっている。雇用先が少ない障害者の職場を補う上、農業の担い手不足解消にもつながると注目が集まっている。(岐阜支社報道部・松野穂波)

 岐阜県山県市梅原の「WSBバイオ」が管理するビニールハウス。8000個以上並ぶシイタケの菌床を、統合失調症の男性(28)=同県大野町=が1つ1つ丁寧に育ち具合を見て回る。

 大学3年の時、統合失調症と診断され、自主退学。スーパーや薬局でアルバイトしたが1年と続かなかった。今の仕事はもうすぐ4年。「病気に配慮してくれるし、質の良いシイタケを作りたいと試行錯誤するのは楽しい」。初めは体調が安定せず出勤できないこともあったが、徐々に勤務時間を増やし、今は1日4時間、週5日の労働に励む。

 同社は、障害者の雇用確保のため2008年に創業。高齢で農作業ができない農家らの休耕田を借り、18〜64歳の知的障害者や身体障害者、精神障害者ら26人がシイタケ、ワサビの栽培、食品加工を手がける。直売所の販売のほか有名ホテルや大手食品メーカーと取引し、収益を上げている。

 藤原雅章代表(59)は「作業の説明に時間はかかるが、一度覚えると仕事は丁寧で一生懸命取り組む。野菜を育てる作業で自信もつき、心にも良い」と話す。知的障害の人は一つの作業に集中したり粘り強さが必要な仕事が得意で、農作業向き。精神障害の人も、農産物の収穫で達成感を味わうことが自信につながるという。

 農業と障害者を結ぶ取り組みは各地でみられる。愛知県犬山市の「DAIファーム」は2011年から、地元農家から借り上げた四棟のハウスでイチゴ4000株と菌床6000個分のシイタケを栽培。10〜50代の障害者20人を雇い、昨年度は黒字の見込みだ。中島望代表(33)は「就労経験の無い障害者もいるが、飽きずに粘り強く作物の状態を見られる強みがある。農業は屋外で汗を流して収穫する喜びもある」と話す。

 三重県いなべ市では、建設会社経営の奥岡司郎さん(36)が障害者のための会社「絆」を昨年設立。農家が耕作を放棄した田畑1・5ヘクタールを借り上げ、障害者らがダイコンやハクサイ、ホウレンソウなどを育て、直売所で販売している。

 昨年5月には、同様の取り組みを行う18都道府県の25社で「農福就労支援ネットワーク」を設立。経営ノウハウや取引先の開拓方法などの情報を共有し、事業の安定、拡大を図っている。

 この取り組みについて、農業の現状に詳しい岐阜大の大場伸哉教授は「農業の高齢化と障害者雇用の問題解決を後押しする」と期待。障害者の雇用問題を研究する日本福祉大の藤井克美教授も「収入は高くないが、農業が精神的に与える影響が重視され、全国的に注目が集まり始めている」と話している

【障害者と農業】
 文部科学省によると、2011年度の特別支援学校高等部卒業生の進学・就職率は30%。一般の高卒者の95%を大きく下回る。一方、農林水産省によると全国の農業就業人口の平均年齢は65・8歳(10年時)。5年前より2・6歳高齢化が進んでいる。


最近のニュースバックナンバー

2025/04/23
【愛知】医療・介護従事者ら悲鳴 パワー カスタマー セクシュアル ハラスメント深刻
2025/04/17
【地域経済】格差縮小も大手との競争厳しく 中小「新卒が採れない」
2025/04/10
【地域経済】春闘2025/中小賃上げ率5.28%
2025/04/05
【愛知】カレー対決で新入社員結束 西区の企業研修
2025/03/19
【経済】食充実したオフィスで働きたい!会社員ら調査 コロナ禍も影響

就職・転職ニュース一覧へ

▲ページの先頭へ
中日しごと情報トップへ