不況が家計を圧迫する中、専門学校生が学校から紹介を受けた企業で働き、学費を稼ぐ「自力進学」が増えている。ホテルなどの企業が奨学金を支給し、学生は在学中に分割して返済する。高校でも、経済的理由で進学を断念する生徒に選択肢の一つとして説明する働きが出ている。(丸田稔之)
「小学生から高校生までの弟妹が3人いるので、親の負担を軽くしたかった」。国際観光専門学校名古屋校(中村区名駅南)1年宮下紗矢香さん(19)は、自力進学を選んだ理由を話した。
商業高校の卒業後は就職を考えたが、ウェディングプランナーの夢をかなえたかった。日中は講義でカラーコーディネートや司会の仕方を学ぶ。夕方から名古屋観光ホテルのレストラン(中区錦)で勤務。2年間の学費180万円の大部分をホテルが奨学金として本人に支給する。
職場では社会人としての苦労を味わった。客から料理に合うワインを聞かれたが、答えられずに先輩のソムリエに引き継いだことも。「未成年でお酒を飲めないから、分からなくて」。遊ぶ時間も限られるが「友人が休みの日に合わせてくれる」と喜ぶ。帰宅が遅くなっても、母は寝ずに待っていてくれる。周囲の支えで、勉強と仕事を両立できている。
同校は30年ほど前に制度を始めた。毎年25人ほどを採用し、全国から学生が集まる。鷲尾正巳広報課長は、2008年のリーマン・ショックの景気後退以後「高校生や教諭からの問合せが増えてきている」と説明した。
大原トラベル・ホテル・ブライダル専門学校名古屋校(中村区名駅)でも同様の制度があり、担当者は「この数年は短大や大学の卒業生が利用する傾向がある」と説明する。
市内の高校で進学指導を担当する男性教諭は「給与が大幅に減り、学費の負担が重荷になる保護者が増えている」と指摘。事前に自力進学など各種の奨学制度の情報を集めるよう呼びかけており、「諦めかけていた進学の道が開けると、生徒の目が輝く」と話していた。