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【三重】「空き交番」対策に相談員制度好評 豊富な経験、増員望む声も

2009/08/03

 「空き交番」の解決策の一つとして、県警がOBらを再雇用して交番に配置する交番相談員制度。住民からは「誰もいない時間が減り、地域の安心につながる」と好評だ。しかし、まだ採用枠が少ない上、勤務日数にも制約があり、問題の全面的な解決には遠い。(鈴木龍司)

 15年前から始まった制度で、当初は限られた交番だけに配置していたが年々拡充。現在は全58交番で1人ずつが、巡回や交通違反の取り締まりで忙しい警察官の留守を預かっている。

 だが、非常勤職員の相談員は月16日以内か、週29時間以内しか働けない。単純計算で、2日に1回は相談員が不在となる。

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 四日市市の四郷連合自治会の後藤一夫会長(73)は、地域で問題が起こると四日市南署の四郷交番を訪ねる。「昔は駐在所がいくつかあったが、集約化され、今はここだけ」と交番の役割が増している実情を指摘する。

 同交番には警察官が8人いるが、現場に出ている時間が長く、相談員の畠山正代さん(48)が対応することが多い。畠山さんは23年前、結婚を機に県警を退職したが、10年前に相談員として復帰し、同交番勤務は7年目。ブラジル人も多い地域の要請に応えようとポルトガル語を独学で身に付けた努力家で、交番には欠かせない存在だ。しかし、毎日いるわけではなく、後藤会長は「予算の都合もあるだろうが、『空き交番』対策というなら同じような方がもう1人必要では」と要望している。

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 一方、県警は警察官時代の経験豊富な相談員が、団塊世代の大量退職で若年化が進んだ交番勤務の警察官の「教育係」になることも期待している。

 2年前、四日市北署の大矢知交番に相談員として着任した寺本忠勝さん(63)は「経験がものをいう仕事だが、ここの交番は半分以上が若い警察官」と明かす。現役時代は交番所長も務めていた。遺失物の相談一つとっても危うい場面があり細かな指導を心掛けている。

 また、寺本さんは近隣の小学校の曜日ごとの下校時刻をまとめた表を作り、見守り活動をするなど地域の信頼を得ている。同交番の武笠悟所長は「大ベテランの寺本さんの姿勢から学ぶことは多い」と話す。

 こうした地域や現場の声を受け、県警地域課は部内レベルで増員の検討を始めた。担当者は「現在の人員では『空き交番』問題の解決にはならない。最近の治安悪化によって需要が増し、都市部から順に拡充を考えたい」としている。

 【交番相談員制度】「空き交番」対策の一環として、1987年に北海道警が導入し、全国に広がった。三重県警は94年に始め、県警退職者を非常勤職員として採用。司法警察権はないが、自転車とバイク盗難の被害届や相談に関する書類を代理作成できる。

 <視線>「一回、留守の時があると『いつ来てもいない』って、おしかりを受けるんです」。交番相談員の言葉だが、裏を返せば、交番に駆け込む人たちの緊急性がいかに高いかを示している。

 全国的な流れとして、交番や駐在所の統合が進む。県内でも10年前と比べ、交番が10カ所増えた一方、駐在所は82カ所も閉鎖された。

 効率化の波に地域の安全・安心が置き去りにされてはならない。正規職員を増やすよりコストが抑えられる交番相談員の拡充は、有効な手だてだと思う。

警察官の留守を預かり、住民に対応する交番相談員の畠山さん(左)=四日市市の四郷交番で
警察官の留守を預かり、住民に対応する交番相談員の畠山さん(左)=四日市市の四郷交番で