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【社会】社員の奨学金返済応援

2017/06/07

費用支給の企業広がる
外食やサービス業 人材確保狙い

 社会に出た後の生活にのしかかる奨学金の返済を軽くしようと、社員に給与とは別に返済用のお金を支給する企業が増えている。学費の上昇と親の収入減で2人に1人の学生が奨学金制度を利用する昨今。人手不足が深刻な外食やサービス業界は支援で優秀な人材の獲得を狙う。(中沢佳子)

 ◇ ◇ ◇

 結婚式場運営のノバレーゼ(東京)は7月から、奨学金を返済中の入社5年目の社員に手取りで最大100万円を一括支給する。27~40歳の36人が受給予定だ。返済中の社員は入社10年目にも最大100万円を受け取ることができる。

 提案した総務人事部の佐藤慎平さん(31)は、自身も奨学金を活用していた。「社員の3割が奨学金を借り返済に苦労している。長く勤めてもらうための福利厚生策として考えた」と説明する。

 制度を利用する金田鮎美さん(36)は、毎月2万1千円を返済中。大学の学費約480万円を奨学金で賄った金田さんは、会計事務所を辞めてノバレーゼに中途入社するまで5カ月間、無収入で返済を続けた経験がある。「覚悟はしていたが負担は重かった。こういう制度が広がってほしい」と話す。

 そば店を展開するゆで太郎システム(東京)は、奨学金を返済する新卒社員に最大月3万円を支給する。池田智昭(ともあき)社長は「学校出たての若者が、お金がなくてできないことが多くあるのはいけない。若手の負担軽減と人材確保の一環で支給を決めた」と説明。受給する中原和也さん(28)は「自分に投資してくれていると感じ仕事にやりがいが出る」と語った。

 日本学生支援機構によると、2014年度の大学生(昼間部)の中で、何らかの奨学金を利用していた学生は51・3%。一方で滞納する人も増え、3カ月以上、返済が滞った人が15年度に16万5000人になった。

 外食産業では他に、牛丼の吉野家ホールディングス(HD)が来春、大学や短大に進学予定の高校生アルバイトに学費の貸与を始める。卒業後に入社し四年働けば返済を全額免除し、同じ日本フードサービス協会の加盟企業なら他社への就職でも半額を免除する。

 奨学金問題対策全国会議の事務局長で弁護士の岩重佳治(いわしげよしはる)さんはこうした企業の支援を評価しつつ、「企業だけに頼らず、国や大学は高い学費の見直しなど根本的な改善を進めるべきだ」と指摘している。