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【愛知】働くママ高校卒業 稲沢の宮地さん父の死機に看護師志願

2017/03/31

 子育てをしながら働き、看護師を目指している稲沢市の宮地あづささん(28)が今月、通信制の県立旭陵高校(名古屋市東区)を卒業した。10代に高校を中退していたが、5年前に父をがんで亡くしたことをきっかけに「人の助けになる仕事を」と奮起。目標の一つだった高校の卒業証書を手に「夢に一歩近づいた」と気持ちを新たにしている。 (花井康子)

 ◇ ◇ ◇

 父の胃がんが見つかったのは宮地さんが17歳のとき。当時は「勉強にも興味が持てず、通学すら面倒くさかった」とすでに高校を中退。稲沢市の実家で同じ年に生まれた長男(11)を育てていた。

 父は闘病生活の末、他界。母らと看病する中で、看護師の友人から患者の体調管理や接し方などを教えてもらい、その知識の豊富さとアドバイスの的確さに驚き、また、助けられた。

 「自分も人を助けられるようになりたい」と看護師を志願。まずは高校を卒業し標準的な学力や教養を身に付けようと2014年に旭陵高校に入学した。早くに高校を中退していたため「ほぼゼロからのスタート」。母に子育てを手伝ってもらいながらアルバイトと勉強を続け、昨年からは稲沢市の稲沢准看護学校にも入学した。

 平日は日中准看護学校に通い、午後6時から深夜0時すぎまでアルバイト。日曜日や空いた時間に通信制の勉強をする厳しい環境の中、3年で高校の全ての単位を取得した。

 まとまった睡眠時間はほとんどとれなかったが「体は疲れても、夢に向かってやりたいことをやれ、充実していた」と振り返る。

 今年1月からは准看護学校の病院実習にも参加。看護師不足で多忙な現場を目の当たりにした。それでも、病気や障害で風呂に入れない高齢患者の体を拭いた際に言われた「ありがとう」の言葉が大きな心の支えになり、夢への思いが膨らんだ。

 19日に旭陵高校であった卒業式にはアルバイトや勉強の合間を縫って黒のスーツ姿で出席。卒業証書を受け取ると、「ばたばたとした中だったが、うれしかった」と感無量だった。

 4月から1年間は、引き続き准看護学校で学び、卒業後は専門学校に進学して正看護師を目指すつもりだ。「忙しくても人の役に立てる仕事。早く仲間入りしたい」