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【愛知】豊明に障害者向け農園 雇用率改善へ企業利用進む

2017/03/19

障害のある人たちの就労を支援する「エスプールプラス」(東京都)は、障害者雇用の受け皿となる「わーくはぴねす農園」を豊明市にオープンした。障害者を雇用したい企業に農園を貸し、紹介。企業側は農園の賃料やサポート料を支払う仕組み。昨年11月の開業以来、定められた雇用率を満たしたいものの、社内での受け入れが難しい企業などで利用が進んでいる。 (森若奈)

 「障害がある人ができることを考えながら、1人1人の仕事を社内で探さないといけない状態。農園での受け入れしかなかった」

 こう話すのは、愛媛県今治市に本社がある造船大手「今治造船」の今治人事総務グループ長篠原敬周(よしちか)さん。農園を月に数回訪れ、同社が雇用している障害者14人をフォローしている。

 企業は従業員に占める障害者の雇用率が2・0%を満たすよう法律で定められている。同社が農園を利用したきっかけは昨年、この雇用率を満たせない可能性があると知ったことだった。

 製造部門は危険な作業があり、受け入れは困難。総務などの部門では既に働いていて、人員を増やすことは難しかった。

 雇用率を満たさず、改善がみられない場合は、企業名の公表もある。「会社の信用を落としかねない」と、上司を説得して利用を決めた。

 豊明市の農園では同社のほか3社が区画を借り、計24人を雇用。エスプールプラスが千葉県内で運営している農園を含めると、約100社が460人を雇用している。働く障害者の7割が、これまで企業での就労が難しかった知的障害者だ。

 エスプールプラス執行役員の岡本暁さんは「企業による知的障害者や精神障害者の雇用は進んでいない。一方で、障害者作業所は低賃金。私たちは、その中間的な就労の場を目指している」と語る。

 農園で働く障害者たちの表情は穏やかだ。豊明市沓掛町の河上拓也さん(19)は「農作業は大変。でも、お給料は九万円ぐらい。前に働いていた作業所よりずっと多い」。精神障害がある男性(40)も「作物が育っていく様子を見ると、やりがいを感じる」と話した。

 水耕栽培で作ったコマツナやサラダ菜、ラディッシュなどの野菜は市場には出さない。「収益を生んでいない」という批判はあるが、岡本さんは「納期に追われるより、働きやすい環境を優先している」と説明する。

 今治造船では、収穫した野菜を社員に配布し、好評という。篠原さんは「喜んでもらうと障害者の社員の次の目標もできる。今後野菜を販売できるかどうかを、見極めながら考えていきたい」と話した。

障害者が働く「わーくはぴねす農園」のビニールハウス=豊明市沓掛町で(市提供)
障害者が働く「わーくはぴねす農園」のビニールハウス=豊明市沓掛町で(市提供)