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【暮らし】歓送迎会のスピーチ、“聞かせる”極意は

2017/03/13

 春は別れと出会いの季節。勤務先の送別会や歓迎会では、参加者が酒を飲む手を思わず止めて聞き入ってしまうようなスピーチで気持ちを伝えたいところ。練りに練ったのに、周りの反応がいまひとつという悲しい経験をしないための極意とは。「なぜ、あなたの話はつまらないのか?」(あさ出版)の著書があり、東京のキー局でテレビ番組の企画にも携わる放送作家、美濃部達宏さん(41)に教えを請うた。

 「『オチ』だけ話しても面白くなく、『フリ』が重要です」と美濃部さんは話す。オチとは、最も言いたいことや話の結論。一方のフリは、結論を際立たせるためのいわゆる前振り。オチとは矛盾した内容の方がメリハリがきく。美濃部さんは「多くの人はオチしか言わないため、スピーチが締まらない」という。「フリとオチ」。これを意識して、送られる人、送る人、迎えられる人、それぞれのポイントを解説してもらうと…。

■去る人 失敗+その後の成長話

 「最後だから、格好良く決めよう」などと考えて、手柄話に終始するのは一番だめ。「武勇伝なんて誰も聞きたくありません」と切り捨てる美濃部さんが勧めるのは、真逆の失敗談など情けない話を盛り込むことだ。とはいえ情けない話だけでは、聴衆の笑いは取れても感動は呼びにくい。

 そこで活用したいのが、フリとオチの法則。情けない話をフリとした上で、それを糧に成長したことやその後の成功談をオチにすれば、内容はぐっと濃くなる。「○○さんのおかげで学びました」と上司や同僚への感謝につなぐのも一手だ。謝意だけを並べると上司らにおもねっているように取られかねず、後味の悪いスピーチになりかねない。「情けない話がないと、結論は生きません」

■送る人 知られざるエピソード

 こちらに関しては「気持ち良く送り出してあげるのが基本」と、意外にシンプル。主賓の失敗を最後まで指摘し、「新たな部署では、あれを教訓に頑張って」などと説教じみては超がつくほど感じが悪い。盛り上がっていた宴席がしらけること請け合いだ。やはり、良いエピソードをはなむけとしたい。ポイントは話し手しか知らないエピソードを盛り込むこと。「漠然とした才能を褒めるのではなく、陰で努力した姿などが望ましいでしょう」と美濃部さん。

 しかし、良い面だけを話してもいまひとつで、考えたいのがフリ。陰の努力をオチにするなら、「見た目はちゃらちゃらしている」「酔っぱらって周りに迷惑をかけたことがある」などと、オチにしたい努力とは懸け離れた情けないエピソードをフリとして先に話し、結びを際立たせたい。

■来る人 「共感」がキーワード

 初めて顔を合わせる新たな上司や同僚を前に自分を売り込みたいと思ってしまいそうだが、美濃部さんは「これまでの成功談を話すのは印象が悪く、逆効果。共感が大事です」と説く。

 たとえば新たな仲間が手掛けたこれまでの仕事を取り上げ、「自分もあのような仕事を一緒にしたい」などと言えば、親しみを感じてもらいやすい。「事前に下調べし、フリやオチ、共感をキーワードにスピーチを考えてみて」と呼び掛ける。

 (諏訪慧)

美濃部達宏さん
美濃部達宏さん