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【地域経済】職場発 うちの秘策/JBイレブン サンクスカード制度

2017/02/16

褒めて増やす働く喜び

 ラーメン店と中華料理店を展開するJBイレブン(名古屋市)は、店員同士が互いに褒め合い、感謝の気持ちを伝える「サンクスカード」制度を導入している。飲食店の人手不足が深刻化する中、働く喜びを実感することで従業員の満足度を上げ、長く働いてもらう狙いがある。顧客満足につながる効果も出始めている。(曽布川剛)

 「お客さまの目を見て接客できるようになってきました」。愛知県大府市の「らーめん一刻魁(さきがけ)堂」共和店。佐瀬友宏店長(43)が、そう書き込んだカードをパート女性(35)に手渡した。受け取った女性は「カードの内容はできて当たり前だけど、またがんばろうという気になる」。

 制度は、店員が仲間の働きぶりを見て気付いた点をカードに書き、直接手渡す仕組み。同社は客のクレームが減らず、退職率も上がって人手不足になっていた3年前に始め、10枚ためると店舗で使える金券と交換できる制度も取り入れた。現在は八十三店全店舗で取り組んでいる。

 「1人欠員なのにお昼のピークタイムに入店対応してくれたおかげで何とか乗り切れました」「(客の少ない)アイドルタイムに箸の補充など翌日の準備をしてくれてありがとう」。カードには、こんな言葉が並ぶ。当初は金券目当ての店員もいたが、がんばる姿を仲間に見てもらう喜びに気付く店員が多いという。

 一刻魁堂共和店では1年ほど前からパート店員への応募がなく、ピークタイムは周辺店から応援をもらうこともあった。

 店の雰囲気が原因と考えた佐瀬店長が昨年6月から積極的にカードを渡すようにしたところ退職者が減り、従業員を3人増員できたという。

 「厳しい言葉で指導することが多かった以前と比べ、褒めることで店員同士のコミュニケーションや笑顔も増え、店に活気が出てきた」と佐瀬店長は実感する。

 制度の目的は退職率の低減だけではない。細やかな気配りでクレームを減らし顧客満足度を上げることも目指す。中華料理「ロンフーダイニング」では、カードのやりとりが多い店ほど、客のアンケートで店員が名指しで褒められる傾向があるという。

 JBイレブンの福島寿雄部長は「店舗での接客はチームプレー。仲間同士で気付く力が付けば、お客さまへの思いやりの心も自然と向上していくはずだ」と好循環に期待する。